日本に本格的な激辛ブームが到来したのは、現在を遡ること40年以上、1980年(昭和55年)代の話。外食産業では辛さ○○倍カレーの元祖「ボルツ」がブームを牽引し、スナック菓子業界では1984年(昭和59年)9月に湖池屋が「カラムーチョ」で新ジャンルを開拓。現在は “第4次激辛ブーム” の真っ只中、さらにコロナ禍が追い風となり、激辛系の注目度と勢いは加速の一途をたどっています。
このページでは、2021年(令和3年)1月〜12月発売品の中で、実際にブログで紹介してきた “ちゃんと辛い” 激辛系のカップ麺を厳選し、ランキング形式でTOP5を紹介します。年間1000食以上のカップ麺を実食した筆者(@honjitsunoippai)の独断と偏見に基づくランキングなので、個人的な嗜好及び主観的な考えも含みますが、よろしければ最後までお付き合いください。
カップ麺ランキング 激辛篇 2021ver.
後に “第1次激辛ブーム” として語り種になる1980年代のヒット商品といえば、冒頭でも触れた1984年9月発売の「カラムーチョ」が有名で、辛さレベルは現在の水準で辛口の枠を出ないレベルでしたが、辛味にスポットを当てた市販品そのものが珍しかった当時。その約1年後、1985年にベルフーズ(現・クラシエフーズ)が「カラメンテ」という商品を出し、それが激辛カップ麺の元祖とされています。
ベルフーズの「カラメンテ」は、たった1年の間に35億円の売り上げを叩き出し、空前の大ヒットを記録。外食産業でも前述の「ボルツ」を筆頭に “超辛” や “辛さ○○倍” を謳う店が増え、1986年には「『現代用語の基礎知識』選 新語・流行語大賞」における新語部門の銀賞に「激辛」が選出されたほど。それを境に “第1次激辛ブーム” は落ち着きましたが、あくまでも一時的に鳴りを潜めただけ——。
次に “第2次激辛ブーム” と呼ばれる波が到来したのは、東南アジアの食文化・エスニック料理が日本で急速に拡大した1990年代。その先駆けとなったのが「コカレストラン(Coca restaurant)」の日本出店(1992年)で、青唐辛子をはじめとするアジア特有の辛さや酸味の組み合わせが日本人の心を掴み、これまでの赤唐辛子とは違うタイプの刺激に多くの方が魅了されました。
ときに1992年といえば、日本の経済が大打撃を受けたバブル崩壊の年。この頃から専門家の間では “激辛と景気の低迷には密接な関係がある” と囁かれるようになり、そのメカニズムは “辛い食べ物を摂取すると、脳内に多幸感をもたらすエンドルフィン(endorphin)が分泌され、ストレスが緩和されたように感じられるから” というもの。
依然として続くストレス社会に激辛が寄り添っていたのはいうまでもなく、激辛唐辛子のハバネロが勢力を広げ始めた2003年頃、ついに “第3次激辛ブーム” が勃発。従来の激辛よりも辛味水準が跳ね上がり、非常識な辛さの商品が市場に並び始め、2008年11月発売の「蒙古タンメン中本」(日清食品)や2009年1月発売の「辛辛魚らーめん」(寿がきや食品)など、有名店監修の激辛カップ麺も定番化。
かくして “第4次激辛ブーム” の真っ只中とされる2021年12月現在、第2次激辛ブームから伸び始めたエスニック系の辛さ、第3次激辛ブームよりも非常識にエスカレートした万人受けしない刺激、さらに麻辣(マーラー)ブームの火付け役となった花椒(ホワジャオ)の痺れなど、より複雑で強烈な刺激が求められ、それに拍車を掛けたのがコロナ禍の自粛生活に伴うストレスです。
2021年の激辛カップ麺を振り返ってみると、引き続き唐辛子の辛さ(カプサイシン)に注力しつつ、下半期にかけて花椒の痺れに特化した商品が昨年よりも減り、コロナ禍で需要が大幅に増加したニンニクの旨味を組み合わせた商品が目立つなど、ただ辛いだけじゃない「辛旨」系の商品が求められているように感じたのですが、まるか食品の獄激辛(ごくげきから)シリーズも残念ながら(?)意気軒昂。
というわけで、このページで発表する2021年のカップ麺ランキング【激辛篇】では、昨今の即席カップめんユーザーの需要も加味し、2020年のランキングよりも若干ながら辛味の水準を下げ、激辛に片足を突っ込むかどうかの商品も視野に入れながら、実際に食べて “ちゃんと辛かったけど美味しい” と感じた5つの商品を厳選します。
第5位「激辛高菜豚骨ラーメン」★5(10段階評価:及第点=3)
ランキング第5位のカップ麺は、佐賀県三養基郡基山町に本社・工場を置くサンポー食品の「激辛高菜豚骨ラーメン」で、2021年6月21日に新発売。即席カップ麺に初めてレトルトタイプの辛子高菜を採用した、1985年(昭和60年)10月発売のレギュラー商品「高菜ラーメン(高菜とんこつラーメン)」をベースにした変わり種で、いつものレトルト九州産辛子高菜を10倍辛くした激辛高菜を搭載。
実は2020年7月27日にも同じタイトルのスポット商品を発売していましたが、そこで高評価を得た九州産激辛高菜の美味しさはそのままに、煎り胡麻(いりごま)を増量するだけでなく、新たに擂り胡麻(すりごま)を配合することでスープのコクを強化。ラード入りの油で揚げた麺の芳ばしさとポークエキスにこだわった粉末スープ、それに絡み合う激辛高菜のバランスも緻密に計算された一杯でした。
ちなみに後述する4位〜1位の激辛カップ麺はスムーズに選び出せたのですが、1年を振り返ってみると同率5位の商品が多く、なかなか決め切れなかったので、個人的な好みで印象に残っている「激辛高菜豚骨ラーメン」をピックアップ。ええ、異論は認めますw ただ、即席カップ麺ならではの魅力とサンポー食品らしさが存分に伝わってくる商品だったので、もし来年も再販されたら試してみてください。
関連ページ:唐辛子を通常の10倍使用【九州産激辛高菜入り】サンポー食品「激辛高菜豚骨ラーメン」が進化して再登場!!
第4位「来来亭 旨辛麺」★6
ランキング第4位のカップ麺は、ファミリーマート限定の「来来亭(らいらいてい)旨辛麺(うまからめん)」で、2021年8月10日に新発売。京都風醤油味を標榜するラーメンチェーン「来来亭」監修のもと、お店で人気の「旨辛麺 3辛」をカップラーメンで再現。製造者は「来来亭」と15年以上の付き合いがあるエースコックで、青唐辛子の清涼感とリアルな背脂のコクが見どころ。
2015年4月7日に発売されたサークルK・サンクス限定商品「Prime ONE(プライムワン)来来亭 旨辛麺」を皮切りに、2017年10月31日発売品以降の「来来亭 旨辛麺」はファミリーマートが通年販売していましたが、2019年の夏——。蒙古タンメン中本の北極ラーメンを超える激辛版「来来亭 旨辛麺 辛さMAX(旨辛麺MAX)」がリリースされて以来、実は2年ぶりの復活となった「来来亭」監修の旨辛麺。
従来の「来来亭 旨辛麺」と比較して、味の方向性は大きく変わっておらず、それだけに新進気鋭の要素こそなかったものの、プッコチを彷彿とさせる青唐辛子の清涼感と背脂の組み合わせは、即席カップめん業界でも唯一無二の個性的なテイスト。辛さは激辛に片足を突っ込む程度の瀬戸際でしたが、今年は特に背脂のコクが印象深く、スープ単体では10段階基準で「★7」の超高評価を叩き出しました。
関連ページ:死神再降臨!?【来来亭】監修の辛いカップ麺「旨辛麺」2021年は “激辛に片足を突っ込む辛さ” ファミマ限定発売
第3位「東京RAMENS AFURI 新・覚醒 激辛柚子辛紅らーめん」★6
ランキング第3位のカップ麺は、日清食品の「東京RAMENS AFURI 新・覚醒 激辛柚子辛紅らーめん」で、2021年6月28日に新発売。おしゃれ淡麗系のラーメン店「AFURI(あふり)」が提唱する “旨辛すっぱい” 新コンセプト「AFURI辛紅(からくれない)」監修の激辛カップラーメンで、昨年のカップ麺ランキング【激辛編】で8位に選定した、2020年6月29日発売品を前身とする商品。
2020年6月発売品は「日清 東京NOODLES AFURI 覚醒 激辛柚子塩らーめん」というネーミングで、同じく「AFURI辛紅」の看板メニュー「柚子辛紅らーめん(Yuzu Kara Kurenai Ramen)」を再現していたのですが、本年よりブランド名を「東京NOODLES」から「東京RAMENS」に改名。さらに “鶏の旨味” と “柚子の酸味” を強化して、味の面においてもブラッシュアップ。
別添の “新・覚醒香油” を加えた後の辛さも2020年6月発売の「AFURI 覚醒 激辛柚子塩らーめん」を上回り、昨年に感じた辛味に対する物足りなさも補完するなど、明らかに磨きをかけての再登場で、2021年は堂々の3位にランクイン。実は「中の人」曰く “お店の需要が薄まるのでは‥‥” と恐怖したほどの逸品で、柚子の酸味と唐辛子の辛さクセになる、個性的で素晴らしい一杯でした。
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第2位「蒙古タンメン中本 北極ラーメン」★7
ランキング第2位のカップ麺は、セブン&アイグループ限定の「セブンプレミアム 蒙古タンメン中本 北極ラーメン」で、2021年7月3日に新発売。東京都板橋区に本店を構える「蒙古タンメン中本」の激辛メニュー「北極ラーメン」を再現した数量限定のカップラーメンで、2014年7月14日の発売以来、毎年夏の恒例となっているのですが、2021年は数年ぶりの値上げを実施。
従来の販売価格は198円(税込213円)だったのに対し、今年から208円(税込224円)に改定されたのですが、なんのなんの。サブタイトルの “激辛味噌” が “激辛旨味噌” に変わり、従来のスープには含まれていなかったクリーミングパウダーを新たに導入。引き続き強烈な辛さを打ち出しながら、スープの旨みとコクを強化して、麺を80gから85gに増量していたのもリニューアルポイント。
具材の味付豚肉が大豆たん白加工品(フェイクミート)に切り替わったので、それについてはネガティブに思える変更ではあるものの、食感については四角いチップ状のチャーシューと大差なく、結果的に以前よりも総合力がアップしたように感じました。おそらく来年の夏も発売されるハズなので、また変化があるのかどうか、加えて変わり種の北極が出るのかどうか、それも含めて今後も注目しています。
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第1位「麺処井の庄監修 辛辛魚らーめん」★8
2021年の激辛カップ麺ランキングにおける最強の一杯は、寿がきや食品の「麺処井の庄(いのしょう)監修 辛辛魚(からからうお)らーめん」で、2021年1月26日に新発売。2009年(平成21年)1月26日の初代「麺処井の庄監修 辛辛魚らーめん」の登場以来、毎年恒例となっている不動の人気商品で、今年の「辛辛魚らーめん」は13代目になるのですが、このブログでは3年連続でNo.1にランクイン。
すでに熱狂的なファンを数多く抱えている、激辛カップ麺を語る上で欠かせない超有名どころなので、いまさら多くを解説する必要はないのかもしれませんが、毎年すこしずつマイナーチェンジしている冬の風物詩。今年は2020年1月発売品(12代目)と比較して “辛辛魚らーめんの辛さと旨さはそのままに、より一体感のある重厚なスープに” ブラッシュアップ。
あえて2020年1月発売品よりも辛味を抑えているような仕上がりで、個人的には激辛に片足を突っ込む程度の辛さだと感じたのですが、それだけに豚骨の存在感と魚粉の勢いが増し、なおかつ “お店の辛さに近くなった” というのも再現度を評価する上で重要なポイント。近年の激辛カップ麺は「旨み」や「コク」も重要視されるようになったので、それを反映したのかもしれません。
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まとめ
激辛と景気の低迷(ストレス)には密接な関係があると前述したように、激辛カップ麺の数が増えるということは、ある種の危惧を伴うこと。しかし、ストレスを発散することだけが激辛の魅力ではありません。特に2021年は “極端な辛さと同じくらい旨みやコクを大切にした商品が多かった” ので、いい意味で嗜好性が強くなったというか、激辛ブームも新たなステージに入りつつあるのかなと。
辛さだけでいえば、まるか食品(ペヤング)の「獄激辛シリーズ」がダントツで、2021年だけでも「獄激辛カレー」「ハーフ&ハーフW獄激辛」「獄激辛担々」「獄激辛にんにく」「獄激辛麻婆」をリリースしているのですが、そろそろネット民も飽きてきたところ。それも含めて来年はテコ入れが必要な時期だと思うので、引き続き激辛市場における変化が楽しみです【author・taka :a(大石敬之)】