どうも、taka :aです。
本日の一杯は、2019年12月17日(火)新発売のカップ麺、明星食品「とら食堂 ワンタン麺」の実食レビューです。
福島・白河ラーメンの真髄「とら食堂」のカップラーメンが2019年も登場!
実際に食べてみた感想と経験に基づいて評価し、カップ麺としての総合力を判定します。よろしければ、最後までお付き合いください。
とら食堂 ワンタン麺 2019
「とら食堂」とは、福島県は南の玄関口ともいわれている白河市の老舗ラーメン店で、ラーメンの天才と称えられた創業者・竹井寅次(たけい とらじ)氏が1969年(昭和44年)に開業した「中華そば とら」が前身。その後、1973年(昭和48年)に現在の本店が位置する双石滝ノ尻の田園ど真ん中に店舗を移転させ、お店の名前を「とら食堂」に改めました。
本店は “とら系” と呼ばれるジャンルの総本山とされ、豚骨や鶏ガラから取った化学調味料不要の澄んだ醤油スープとコシの強い手打ち麺、そして具材には煮豚ではなく焼き豚を使っているのも特徴的なポイント。もともと白河は信州・出雲・盛岡に並ぶ日本四大そば処の一つに数えられる「白河そば」発祥の地で、そば打ちの技法をラーメンに応用し始めたのも初代・寅次氏の思い付き。
竹井寅次氏は、1926年(大正15年)に農家の次男として生まれ、若い頃から畑仕事に精を出していたそうですが、アジア初のオリンピックとなる東京オリンピックが開催された1964年(昭和39年)5月——火災で自宅が全焼。それ以前に兄を戦争で亡くしていたこともあり、火事をきっかけに田畑を親戚に任せ、人が変わったように酒屋を飲み歩くようになったそうです。
しかし、手作りの雲呑(わんたん)に定評があった「まるい食堂」という店でラーメンを食べた寅次氏は感動を覚え、それがラーメン人生を歩み始める切っ掛けとなった転機。当時の詳しい資料は本店にも残っていないらしく、「中華そば とら」の前に屋台で半年ほどラーメンを提供していたなどの情報もあるのですが、真偽のほどを知るのは故・竹井寅次氏のみ。
近所でも評判の遊び人で、賭け事が好きな大酒飲み。挙句の果てには仕入れの金で競輪場に足繁く通っていたともいわれているのですが、寅次氏の作るラーメンは白河の地で軒並み評判が良く、弟子入りを志願する人が後を絶たない中、その人たちを弟子にとって “自らが培ってきた技術を惜しげもなく伝授した” というのも語り種にされている「寅さん伝説」の一つ。
そんな先代の竹井寅次氏は56歳の若さで此の世を去って、当時28歳だった現在の2代目店主・竹井和之(かずゆき)氏が父の跡を継ぐことに。最初の5年間は味に自信がないと各メディアからの取材を断っていたそうですが、1988年(昭和63年)に掲載された『白河にうまいものあり』という福島民友新聞の記事を切っ掛けに人気が再燃しました。
白河ラーメンには、とら系と一線を隠す “茶釜系” と呼ばれるジャンルも存在し、それは「茶釜本店」及び「茶釜食堂」が一子相伝で守り続けてきたもの。対する「とら食堂」は、故・山岸一雄氏が残した功績にも通じる数多くの弟子を輩出し、現在の “とら系” と呼ばれる白河ラーメンの一大ジャンルを築き上げ、白河の名を日本全国に轟かせた立役者。
今回の新商品「とら食堂 ワンタン麺」は、地元ラーメン店でも定番の人気具材・ワンタンをトッピングしたもので、とら系総本山「とら食堂」2代目店主と明星食品株式会社が共同開発したファミリーマート専用のカップ麺。実は2018年10月23日にもファミリーマート・サークルK・サンクス限定で販売されていたので、同じ条件での販売は2度目になります。
開封
カップ麺に別添されている小袋は、前回と同じく「粉末スープ」「液体スープ」「かやく」の合計3袋。パッケージの写真は箸で麺をリフトしていた構図から散蓮華(ちりれんげ)でワンタンを掬い上げている構図に変わり、やや粉末スープの小袋が小さくなっているように見えますが、大幅に仕様が変わったような様子は見られません。
麺は熱湯5分のノンフライ麺で、調理前から色合いにムラがあり、さらに縮れの強弱もランダムな特徴のある見た目。パッケージ(フタの開け口)から「スーパーノンフライ製法」の文字は無くなっているのですが、その流れを汲んだものと思われ、さらにワンタンの数も前回と同じく4個と嬉しいボリュームです。
販売エリアは北海道や沖縄を含む全国のファミリーマートが対象で、希望価格は268円(税込289円)とコンビニのPBカップ麺としては限界に近い値段。前回の価格・258円(税込278円)と比較して11円も値上げされているのですが、おそらく今年6月1日に実施された価格改定による致し方ない影響かと思いますし、麺の量は何気に65gから70gに増えていました。
製品詳細情報・購入価格等
製品名:とら食堂 ワンタン麺 販売者:明星食品株式会社 製造所:東日本明星 埼玉工場(埼玉県比企郡嵐山町川島2360) 内容量:111g(めん70g) 商品コード:4902881472784(JANコード) 発売日:2019年12月17日(火) |
麺の種類:ノンフライ麺 スタイル:大判どんぶり型 容器材質:プラ(PS) 湯量目安:420ml 調理時間:熱湯5分 小袋構成:3袋(粉末スープ・液体スープ・かやく) |
原材料名とアレルギー表示
【原材料名】めん(小麦粉(国内製造)、植物油脂、食塩、でん粉、大豆食物繊維、香味調味料、ソース、酵母エキス)、スープ(鶏・豚エキス・豚脂・しょうゆ、チキンオイル、たん白加水分解物、食塩、糖類、香味油、チャーシューエキス、酵母エキス、醸造酢、酵母粉末、植物油脂、昆布粉末、香味調味料)、かやく(ワンタン、チャーシュー、ねぎ、メンマ)/ 加工デンプン、調味料(アミノ酸等)、酒精、カラメル色素、ソルビット、炭酸カルシウム、香料、かんすい、炭酸マグネシウム、酸化防止剤(ビタミンE、ビタミンC)、カロチノイド色素、ビタミンB2、ビタミンB1、酸味料、香辛料抽出物、(一部に卵・乳成分・小麦・えび・牛肉・ごま・さけ・さば・大豆・鶏肉・豚肉・りんご・ゼラチンを含む)※本品製造設備では、かにを含む製品を生産しています。 |
実食開始
別添の液体スープと粉末スープの小袋は、熱湯を注いでから5分後の食べる直前に入れる後入れなので、「かやく」の小袋のみ最初に開封します。中にはチャーシュー・ねぎ・メンマと前回から変わらないラインナップですが、ネギが小さな乾燥ネギから大きな斜め切りに変わり、メンマも調理前から “ふにゃふにゃ” のメンマに変わりました。
一見すると色の悪いメンマなんですけど、調理前に “ふにゃふにゃ” なのはセブンプレミアム「地域の名店シリーズ」の「中華蕎麦とみ田」や「龍上海」のカップラーメン(※2019年12月現在主流の縦型ビッグではなく廃盤になった大判どんぶり型)に使われていたタイプのメンマと同じメンマで、実は明星食品が本気を出した時に入っていることが多い目印のような具材。
ちなみに「とら食堂」のカップラーメンといえば、これまで例外なくサンヨー食品(サッポロ一番)と長年にわたって契約していたところ、なぜか昨年より担当が明星食品に変わりました。さて、あいかわらずボリューム満点の調理直後、引き続き前回との違いやコストパフォーマンスにも注目しつつ、「めん」「スープ」「かやく」の特徴を解説し、カップ麺としての総合力を判定します。
栄養成分表示:1食(111g)当たり
カロリー:427kcal |
参考値(調理直後に分別した値) 熱量:427kcal(めん・かやく:325kcal)(スープ:102kcal) |
※当ブログに掲載している「原材料名」及び「アレルゲン情報」並びに「栄養成分表示」などの値は、実食時点の現品に基づいたもので、メーカーの都合により予告なく変更される場合があります。ご購入・お召し上がりの前には、お手元の製品に記載されている情報を必ずご確認ください。 |
めん
本店では午前11時オープンの営業時間に合わせ、早朝5時前から仕込みを行い、竹と麺棒を操りながら全身を使って打つ「手ごね打ち」という技法で加水率の高い麺を製麺、3日間寝かせてコシを強くするそうです。それを再現したノンフライ麺も、明星食品の社員が毎朝5時から——というわけではないと思いますが、2019年で “最強の多加水麺” かもしれません。
もちろん多種多様なすべての麺において最強と断定することはできないけれど、加水率の高さと密度感については群を抜いてトップクラス。そのため表面に小麦の滑りが出てくるのですが、ある意味それも手打ち麺を茹で上げた手作りの臨場感に通じるポイントといえなくもないですし、食べ始めは極限まで脱気されているような弾力で食べ応えバッチリ。
前回の麺と比較して大豆食物繊維と香味調味料の含有量が逆転し、デキストリンと植物性たん白がカットされているのですが、まるで冷凍食品の茹で中華麺に勝るとも劣らない粘り気の強さと芳醇な小麦の香りは継続で、かの「マルちゃん正麺カップ」にも引けを取らない品質の高さ。けれども1分ちょっと長めに待ったほうがナチュラルなので、時間にゆとりのある時に調理してください。
スープ
実店舗の澄んだスープは化学調味料を一切使わないため、丸鶏や鶏ガラ、豚のゲンコツ(大腿骨)・胴ガラなど、多量の食材を用いて出汁を取るのが特徴で、それを一つに纏め上げているのが老舗の技。対するカップ麺の粉末スープには、さっそく粉末醤油の他に旨み成分が含まれていたので、無化調ならではのクリアなテイストではありません。
しかし、昨年と同じく液体スープを開封した瞬間から動物系の豊潤な香りがグワッと押し寄せ、液体スープに含まれる動物油脂には豚脂(ラード)の厚みに鶏油(チーユ)の芳ばしさをブレンド。さらに濃口醤油ベースのタレが粉末醤油では出せない醤油のコクを打ち出し、それが尖り過ぎないように多めのオイルが包み込む計算されたフレームワーク。
アレルゲンに「えび・さけ・さば」の表示も見られますが、それぞれ味覚に作用してくるほど強い味ではありません。おそらく明星食品が頻繁に使用している香味油か香味調味料の中に含まれている微量の成分と思われ、海産物は昆布のみ使い、煮干しやカツオなどの魚介出汁は使わない動物系が主体の醤油味。
ほんのり醸造酢の酸味が隠し味的に醤油のフレッシュなイメージを高め、チャーシューエキスがコクを深めている、なんとも古典的なスープに仕上がっていて、けっして派手な味ではないけれど、逆に近年の新商品では珍しいスタイル。存在感の強いノンフライ麺やワンタンに負けない、豊潤な動物系のコクは今年も受け継がれていました。
かやく
後述する4個のワンタンが主役ですが、意外と負けていないのが先入れかやくの具材。チャーシューに厚みはないものの、広い面積とジューシーな脂身に食べ応えがあって、ちゃんと値段に見合ったものを採用。ふにゃふにゃメンマにコリコリとした歯応えは望めませんが、しっとりした繊維質が丁寧に煮込んだメンマを思わせ、ネギも斜め切りの高級感のあるタイプに変更しています。
税込289円のカップ麺でも麺とスープのクオリティが高いので、かやくのチャーシュー・ねぎ・メンマだけでも上等なのに、大きなワンタンを4個も搭載しているという、ちょっと意味不明な状態。赤字覚悟か——と、心配になるくらい大きなサイズのワンタンに戻りムラは見られず、エースコックのワンタン(改悪後)みたいに皮の繋ぎ目がパキッとすることもありません。
ワンタンの中身として入ってる餡(あん)は、ピシッと生姜の効いた中華風の味付けで、おそらく鶏の挽肉が主原料と思われます。そして、特に記載があるわけではないのですが、おそらく今年も “スーパーノンフライ製法” で作られた「ノンフライワンタン」で、皮に揚げワンタンのような油っぽさはなく、もちもちとした茹でたての食感と滑らかな喉越しのよさを見事に再現。
おそらく製法上、皮に植物油脂を練り込んでいるのだと思いますが、カップ麺の製造所もノンフライワンタンを作っている東日本明星の埼玉工場ですし、食べた感じはもちろん、調理前のワンタンを触ってもヌルヌルベタベタしないので、おそらく非油揚げで間違いないでしょう。このワンタン、めちゃくちゃ美味しいですよ。
総評
★★★★★★★☆☆☆(★7)
前回と比較して値段は上がっていましたが、その分だけ麺の量が増え、具材はチャーシューの質を維持しながらネギとメンマを上質なものに変えるなど、お値段据え置きで質を下げるのではなく、値段に妥協せず品質にこだわった作りに好感が抱けるリニューアルでした。とにかく今回の見所はノンフライ麺とノンフライワンタンで、そのためだけに買っても損ではありません。
カップ麺で300円弱といえば、けっして安い値段ではないものの、主食が1食300円以内と思えば贅沢な食事というわけでもなく、場合によってはファミマのコンビニおにぎり(ちょっと高いやつ)を2個買うよりも安いくらい。弾力のある麺に具沢山な構成で食べ応えもあるため、考えようによっては悪くない選択肢だと思います。2019年の「とら食堂 ワンタン麺」も数量限定なので、お早めにお試しください。