どうも、taka :aです。
本日の一杯は、2019年4月1日(月)リニューアル新発売のカップ麺、エースコック「産経新聞 大阪ラーメン あまから醤油」第8弾の実食レビューです。
産經新聞「それゆけ! 大阪ラーメン部」とエースコックが共同開発した異色の大阪ご当地カップ麺、「産経新聞 大阪ラーメン」が連載40周年を迎える人気漫画「じゃりン子チエ」とタイアップしてリニューアルしました。
「産経新聞 大阪ラーメン」の開発経緯や歴史を振り返りながら、カップ麺を実際に食べてみた感想と経験に基づいて評価し、総合力を判定します。お時間よろしければ、最後までお付き合いください。
産経新聞 大阪ラーメン あまから醤油
『なぜ、大阪にはご当地ラーメンがないのか——』そんな疑問から始まった産経新聞の連載企画、「それゆけ! 大阪ラーメン部」とエースコックのコラボ企画「それゆけ! 大阪ラーメン」プロジェクト。ありそうでなかった大阪ご当地ラーメンを創る! という大きな課題に産経新聞の記者がジャーナリストならではの視点でアプローチし、さまざまな取材の結果 “甘辛” と “始末” を「大阪ラーメン」の商品コンセプトとして弾き出します。
「甘辛」とは、甘いとも辛い(塩辛い)とも違う、濃いと感じる一歩手前の絶妙な甘辛い “旨み” のこと。「始末」とは、大阪ならではの商人気質を背景にしたもので、初めと終わりの辻褄が成立していること、算盤勘定(そろばんかんじょう)ができていることを意味し、転じて料理では食材を無駄なく使い切る精神を表していて、その2本柱を軸に大阪の “新・ご当地ラーメン” をカップラーメンで表現すべく、前人未到の新聞社コラボカップめん開発企画がスタートしました。
「甘辛」の味覚を表現するにあたり、濃口醤油を使用したコクのある鶏ガラしょうゆベースに強めの甘みを加え、あまりラーメンには使われることのない素材かつ大阪(関西)で好まれている “とろろ昆布” を起用。「始末の心」はバイプロダクトの “チャーシューだれ”(風味を抽出する際に生まれた “副産物” )をスープに使用することで辻褄を合わせ、ついに完成した産経新聞×エースコックの共同開発カップめん第1弾「産経新聞 それゆけ! 大阪ラーメン」が発売されたのは2011年12月5日の月曜日——
第1弾は新聞の号外をイメージしたパッケージに身を包み、タテロング(標準サイズより一回り大きいなタテ型ビッグ容器)でリリースされたのですが、あまりの人気から発売当初の各販売店では品薄状態が続き、まさかの3週間で100万食を超える大ヒットを記録。そのまま一発屋で終わることなく2012年9月17日(月)に第2弾を発売、商品コンセプトに “地産地消” を加え、大阪府南部で栽培が盛んな甘味の強い大阪産(もん)の「泉州たまねぎ」をスープに使用し、カップを一回り小さい標準サイズのタテ型レギュラー容器に変更します。
その後、何度もマイナーチェンジを繰り返しているのですが、2015年8月24日(月)のリニューアルから大阪府広報担当副知事「もずやん」とのコラボレーションを実現。エースコックが大阪府の新制度 “もずとも”(「もずやん」と友情を育み、大阪府政の広報に協力する意思のある方で知事の登録を受けた方)の登録第1号となり、2016年8月15日(月)に発売されたシリーズ第6弾から株式会社イートアンドが展開している中華料理店チェーン「大阪王将」とタイアップして、スープを新たに作り直しました。
この頃から同社の看板ブランド「わかめラーメン」と同じ規格サイズ(縦140mm×横140mm×高さ77mm)の丼型容器に変更されているのですが、徐々に泉州タマネギの産地が減り、2016年当時の大阪府内にあった泉州タマネギの作付面積は、なんと最盛期のわずか3%に減少——そのため大量入手が難しく、エースコックの社員が自ら玉ねぎの植え付けを手伝ったこともあったそうですが、大阪王将から授かったの直伝のアイディアをもとに玉ねぎの風味を保ちながら粉末化して長期保存可能となった新技術を導入し、現在も大阪産(もん)の泉州玉ねぎ使用というコンセプトが守られています。
今回の「産経新聞 大阪ラーメン あまから醤油」はシリーズ第8弾、累計販売数は700万食を突破しているのですが、3週間で100万食を超える大ヒットを記録したシリーズ第1弾「産経新聞 それゆけ!大阪ラーメン」(2011年12月発売品)に原点回帰して初代の味を再現。連載40周年を迎えた大阪が舞台の人気漫画『じゃりン子チエ』(家内工業舎)とタイアップし、作者・はるき悦巳さんの描き下ろしイラストが入ったパッケージに刷新されたのですが、どうやら大阪王将はプロジェクトから手を引いたようですね。
漫画作品の描き下ろしパッケージといえば以前、2014年8月11日発売品で『キン肉マン』(作者・ゆでたまごさん)とタイアップしていたこともありましたが、『じゃりン子チエ』のパッケージデザインは全部で4種類。家業のホルモン焼屋「チエちゃん」を切り盛りする小学5年生の主人公・竹本チエ、ホルモン焼屋の屋号が変わってから実質無職の自由奔放な父親・竹本テツ、チエの飼い猫で掃除・ソロバン ・ホルモン焼屋の手伝いまでこなすスーパーキャットの小鉄(月の輪の雷蔵)など、主要キャラクターが描かれた温かいデザインとなっているので、ぜひ店頭でチェックしてみてください。
開封
さて、ここからはカップ麺の中身に触れていきます。別添の小袋は先入れ「かやく入り粉末スープ」と後入れ「調味油」の合計2種類で、前回の最終リニューアルは2017年8月21日(月)。リニューアル前の小袋構成は「粉末スープ」と「かやく」の2種類でしたが、今回から具材とスープを1つの小袋に同梱し、これまでになかった調味油が新たに別添されました。
麺は丸刃でカットされた油揚げ麺(フライ麺)で、容器のサイズは前回と同じ標準サイズの丼型。先ほど容器の大きさは「わかめラーメン」と同じ規格サイズ(縦140mm×横140mm×高さ77mm)と書きましたが、油揚げ麺の雰囲気も「わかめラーメン ごま・しょうゆ」に使用されている麺と酷似しています。けっこう調理前から強めの油揚げ麺臭が漂ってくるのですが、香りのベクトルも同じですね。
ご当地ラーメン不毛の地と呼ばれていた大阪にも、大阪府大阪市東部(東成区周辺)及び東大阪市西部(高井田地区周辺)を中心に親しまれている「高井田ラーメン(たかいだラーメン)」(高井田系ラーメン・高井田系中華そば)というキリッと醤油の立ったラーメンがあり、それが大阪ご当地ラーメンの有力候補だと勝手に思っているのですが、「産経新聞 大阪ラーメン」のコンセプトとは方向性が異なります。
製品詳細情報・購入価格等
製品名:産経新聞 大阪ラーメン あまから醤油 製造者:エースコック株式会社 製造所:兵庫県たつの市・兵庫工場(製造所固有記号 A) 内容量:73g(めん60g) 商品コード:4901071215941(JANコード) 〃 :14901071215948(ITFコード) 規格サイズ:縦140mm×横140mm×高さ77mm 発売日:2019年04月01日(月) |
麺の種類:油揚げ麺(中華麺) スタイル:どんぶり型レギュラー・標準サイズ 容器材質:プラ(PS) 湯量目安:420ml 調理時間:熱湯3分 小袋構成:2袋(かやく入り粉末スープ・調味油) |
原材料名とアレルギー表示
【原材料名】油揚げめん(小麦粉(国内製造)、植物油脂、食塩、しょうゆ、砂糖)、かやく入りスープ(食塩、砂糖、揚げ玉、粉末しょうゆ、味付鶏肉そぼろ、香辛料、ねぎ、ポーク調味料、オニオンパウダー、たん白加水分解物、酵母エキス)、調味油(植物油脂、動物油脂、香味油)/ 加工でん粉、調味料(アミノ酸等)、炭酸カルシウム、カラメル色素、増粘多糖類、かんすい、重曹、カロチノイド色素、香料、微粒二酸化ケイ素、酸化防止剤(ビタミンE)、酸味料、甘味料(スクラロース、アセスルファムK)、ビタミンB2、香辛料抽出物、ビタミンB1、(一部に小麦・卵・牛肉・大豆・鶏肉・豚肉・ごまを含む) |
【本品に含まれるアレルギー物質】小麦・卵・牛肉・大豆・鶏肉・豚肉・ごま(表示が義務付け及び推奨されているもの) |
実食開始
先入れの「かやく入り粉末スープ」を麺の上にあけた瞬間、なんとも絶妙に甘辛い醤油の香りが漂ってきて(ポテトチップスの味付けとかでありそうな感じ)、関西在住の私としては本能的に “間違いなく美味しいやつ” と脳内が捉えているのですが、いきなり大きな変化——そう、まさかの “とろろ昆布がリストラ” されています。こっちが先に切られたか‥‥
2017年8月21日(月)発売品は記事に残していませんが、前回は「大阪王将」の協力を得て大阪ラーメンらしい味わいを追求。大阪王将商品部が試食・選定した味わいとしてスープに “とろみ” をつけ、やや昔と比較して存在感は弱くなっていたのですが、ちゃんと「とろろ昆布」が入っていました。大阪もんの泉州玉ねぎ使用というコンセプトは残りましたが、とろろ昆布が今回まさかのリストラクチュアリングです。
かやく入りスープを狙い、ゆっくりと熱湯を注いだら3分待っている間に「調味油」の小袋をフタの上で温めるのですが、とろみ成分か今回の粉末スープにも仕込んであったので、3分後しっかりと混ぜてください。あんかけ風ほど強烈な粘性率を誇っているわけではないのですが、最短でも30秒〜40秒は混ぜたほうが安心です。
それでは、歴代の「大阪ラーメン」が培ってきた個性と比較しつつ、前任・とろろ昆布を失ってできた穴が埋められているのかどうかに注目しながら「めん」「スープ」「かやく」の順に解説し、カップ麺としての総合力を判定します。
栄養成分表示:1食(73g)当たり
熱 量:322kcal(カロリー) |
参考値(調理直後に分別した値) 熱量:322kcal(めん・かやく:268kcal)(スープ:54kcal) |
※当ブログに掲載している「原材料名」及び「アレルゲン情報」並びに「栄養成分表示」などの値は実食時点の現品に基づいたもので、メーカーの都合により予告なく変更される場合があります。ご購入・お召し上がりの前には、お手元の製品パッケージに記載されている情報を必ずご確認ください。 |
めん
滑らかでのど越しの良い、適度な弾力とコシのあるめんです。
(出典:エースコック公式ウェブサイト「HOME > 商品情報 > 産経新聞 大阪ラーメン あまから醤油」)
丸刃でカットされた油揚げ麺で、エースコック製カップ麺の中でも実にオーソドックスな標準タイプ。実食前に「わかめラーメン ごま・しょうゆ」に使われている油揚げ麺と酷似していると描きましたが、やはり体感的にも大差なく、原材料名の並びも同じなので、おそらく共通かと思います。中庸的な麺ですが、悪い意味で安っぽい麺ではありません。
なめらかな麺の表面は摩擦抵抗が皆無に等しく、角ばっていない丸刃でカットされた断面の丸い麺なので、口当たりと喉越しが良好。しかしながら軽めの縮れとスープの甘辛い味付けやトロミが相俟って、麺が孤立する嫌いは見せません。ただ、けっこう油揚げ麺特有のニオイが強いので、それが苦手な場合けっこう気になるかも——
私は油揚げ麺特有の風味(油揚げ麺臭)が特に苦手なほうではなく、今回は有名店監修の本物志向なコンセプトではありませんし、希望小売価格180円(税別)のカップ麺では特有の魅力としてプラスに評価することもあるのですが、今回ちょっと野暮ったく感じました。けっこうスープの味にも干渉してマスキングする嫌いがあったので、もうちょっとクリアで加水率の低い麺を採用したほうが整うかもしれません。
スープ
ポークベースに香味野菜と大阪産(もん)である泉州玉ねぎの旨みと甘みが合わさったあまから醤油スープです。別添の調味油でスープにコクを加え、おいしさを高めました。
(出典:エースコック公式ウェブサイト「HOME > 商品情報 > 産経新聞 大阪ラーメン あまから醤油」)
前回は別添されていなかった調味油が加わることで表面にオイルが浮かび、粉末スープや油揚げ麺から滲み出るコクだけでは打ち出せないオイル特有の厚みが付与されているのですが、豚脂や鶏油の芳ばしさをメインに重ねるのではなく、動物油脂を混ぜつつ玉ねぎオイルのような芳ばしさを感じる香味油系の内容となっています。それによってコクは確かに増しますが、前任・とろろ昆布を失った穴を完全に補完するだけの能力はありません。
せめて昆布エキスでも入っていれば——と思ったのですが、それらしい原材料は見当たりませんし、体感的にも昆布の旨味は皆無に等しい状態。歴代「大阪ラーメン」の例に漏れず、醤油+砂糖×人工甘味料(スクラロース、アセスルファムK)による甘辛テイストが踏襲されてはいるものの、だいぶ雰囲気は変わりました。
醤油は濃口ですが粉末なのでカドが立ち、甘みも人工甘味料の効果が強いので、だいぶジャンキーなテイスト。オニオンパウダーによって玉ねぎの存在感も確かに感じるのですが、以前よりも化学調味料のピリピリとした刺激が強くなっているので、それが重なることによって玉ねぎの甘みやコクよりもシャープなキレが前衛に躍り出ます。そのシゲキを上手に包み込んでいたのが「とろろ昆布」だったんですけど、みごとに首を切られた今回、同じ甘辛がテーマでも歴代のスープとは別物と言わざるを得ません。
かやく
風味の良い揚げ玉、程良く味付けした鶏肉そぼろ、彩りの良いねぎを加えて仕上げました。
(出典:エースコック公式ウェブサイト「HOME > 商品情報 > 産経新聞 大阪ラーメン あまから醤油」)
前述したように「とろろ昆布」の廃止も大きな変更でしたが、前回は揚げ玉が「泉州たまねぎ粉末入りの揚げ玉」だったのに対し、今回の製品説明では「風味の良い揚げ玉」との解説しかなく、泉州たまねぎ粉末については言及されていません。わざわざ謙遜して隠すメリットはないと思いますし、実際にオニオンの芳ばしさも目立っていなかったので、とろろ昆布と同様に泉州たまねぎの個性についても減退しています。
青ネギは汎用の乾燥ねぎ、程良く味付けした鶏肉そぼろは “エースコックの白い悪魔” もといスポンジ食感のハズレ肉具材で、生姜の効いたスパイシーな味付けのマトモな鶏肉そぼろではありません。味の濃い粉末スープと同梱されていたことから、まったく下味の感じられない具材ではないものの、とろろ昆布と泉州たまねぎ粉末入り揚げ玉のカット——すくなくとも改良とは言えないでしょう。
総評
★★☆☆☆☆☆☆☆☆(★2)
3週間で100万食を超える大ヒットを記録した初代「産経新聞 それゆけ!大阪ラーメン」に原点回帰したという今回のシリーズ第8弾「産経新聞 大阪ラーメン あまから醤油」でしたが、原点回帰どころか大阪ラーメンの原点として打ち立てられた2本柱のうちの1本・とろろ昆布を引っこ抜くという大幅な変化が見られ、それはコスト調整による原料の見直しとしか思えない、お世辞にも改良とは言えない方針の変更でした。
大阪産(おおさかもん)の泉州玉ねぎを引き続き採用した地産地消のコンセプトは実に素晴らしいと感じますし、わずかしか収穫できない現状も理解しているつもりですが、実際のところ体感的に泉州たまねぎ使用の恩恵は目立っていません。それよりも分かりやすくて個性的だった「とろろ昆布」の廃止が何より痛手だったので、歴代の「大阪ラーメン」を知っている方は、今回のリニューアルから別物と割り切ったほうがいいでしょう。
おそらく今後も継続して販売されると思いますが、2019年6月1日(土)出荷分から施行される価格改定によって、今回の「大阪ラーメン」も現行の希望小売価格(税別180円)から新価格(税別193円)に改定されます。カップ麺の値上げについては業界全体の決定事項なので受け入れるしかありませんが、残念ながら今回は次回のリニューアルに期待したくなる内容でした。とろろ昆布の復活をイチバンに希望しますが、泉州たまねぎじゃなくても構わないからスポンジ状の肉そぼろをオニオン具材と置換して玉ねぎ成分を強化するなど、次回のテコ入れに期待ですね。