どうも、taka :aです。
本日の一杯は、2019年9月9日(月)新発売のカップ麺、日清食品「島耕作も愛した幻の立ちそば 虎ノ門 港屋 辛香るラー油の鶏そば」の実食レビューです。
いまや幻となってしまった “日本一行列ができる立ち食い蕎麦屋”「そば処 港屋」の元店主が監修したラー油蕎麦がカップ麺で復活!!
実際に食べてみた感想と経験に基づいて評価し、カップ麺としての総合力を判定します。よろしければ、最後までお付き合いください。
幻の港屋 カップ麺で復活
今回の監修店「そば処 港屋 MINATOYA(みなとや)」とは、東京・虎ノ門にあった行列の絶えない立ち食い蕎麦屋で、創業は2002年7月 “唯一無二の立ち食いそば屋” をコンセプトにオープン。お店で提供されていたラー油入りの「冷たい肉そば」は、蕎麦の歴史を大幅に変えた事件と言っても過言ではなく、開業当時から話題の行列店でした。
銀行マンから転身した元「港屋」店主、現「株式会社KIKUCHI Art Gallery」の代表・菊地剛志(きくち たけし)氏が手掛けた店内は、蕎麦に集中できるように照明の明るさ落とし、内壁は黒。中央には水を張った黒い大理石のメインテーブルを配置するなど、スタンディングバーさながらのモダンなデザインで、まさに人気絶頂中だった2019年2月4日、なんの前触れもなく「港屋」は “他界” します。
“どうやら寿命が来た様です。(中略)寂しすぎて、お別れの言葉さえお伝え出来なかった事、ごめんなさい。 平成31年2月4日 感謝の薔薇に代えて——” 当時、お店の入り口には一通の手紙が残されていただけ。お客さまの愛に溢れた「港屋」には命が宿っている、なので「閉店」ではなく「寿命」、その寿命を迎えた “港屋という存在が今日をもって他界する” という挨拶でした。
実は2016年8月、ひっそりと東京都千代田区大手町にて「MINATOYA2(そば処 港屋2)」をオープンしているのですが(※2019年9月9日現在「港屋2」は営業中)、菊地剛志というクリエイターが本店で蕎麦を打つことはなくなった現在——その実店舗で提供されていた「肉そば」の特徴は、田舎そば系の自家製極太蕎麦と濃いめの甘辛いつゆに「ラー油」を浮かべた独特のスタイル。
堆(うずだか)く盛られたガツ盛り蕎麦は食べ応えがあり、モダンなデザインの店からは想像できない “日本蕎麦界の二郎系” という異名を持っていたほど。それは蕎麦業界のみならず、飲食業界全体に大きな衝撃を与え、「馳走麺 狸穴(ちそうめん まみあな)」や「なぜ蕎麦にラー油を入れるのか。」(「カレーは飲み物。」の姉妹店)といったラー油蕎麦の提供店が続々と誕生しました。
それ以来、ガツ盛り蕎麦にラー油を合わせたスタイルは「港屋インスパイア系」「港屋リスペクト系」などと呼ばれ、その波紋はカップ麺業界にも大きく及び、インスパイア系のカップ麺(お店の影響を受けた商品)は何度も定期的に出ています。その源流である菊地剛志氏が直々に監修したオリジナル商品で、正式にカップ麺になるのは今回が初めてかもしれません。
さらに “島耕作も愛した” とタイトルにもあるように、「港屋」はシリーズ累計発行部数4,400万部を超える人気漫画『島耕作(しまこうさく)』で紹介されたこともある有名店。そんな経緯と『島耕作』シリーズの作者・弘兼憲史(ひろかね けんし)氏の画業45周年を記念して、特別に描きおろされた原画をパッケージに使用するなど、かなりの豪華コラボが実現しました。
『島耕作』は、1983年(昭和58年)に講談社「モーニング」誌上で『係長 島耕作』として初登場。実社会の時事を取り込みつつ、部長・取締役・常務・専務・社長・会長——と彼が昇進していく姿が描かれ、2019年8月22日には総合電機メーカー「テコット*」の相談役に就任。今回の商品は、『相談役 島耕作』の “初仕事” でもあります(*作中に登場する架空の法人、旧「初芝電産」)。
開封
さて、カップ麺に別添されている小袋は、特製「港屋 辛香(からかお)るラー油*」が1袋。これは「港屋」のラー油をイメージしたものになるのですが、今回の「辛香るラー油の鶏そば」は元店主が監修した “カップ麺だけのオリジナル商品” とのこと(*小袋に描かれている女性キャラの名前は馬島典子、初芝電器産業第4代社長・大泉裕介の愛人で、島耕作の人生を大きく左右した人物)。
具材は「ごま、味付鶏肉、ねぎ」とシンプルな内容で、やや鶏肉は少なめに見えますが、ネギはフリーズドライかつ大きめにカットされた存在感の大きなもの。2019年9月現在、「港屋2」では「冷たい肉そば(豚)」しか提供していませんが、本家「港屋」時代には「温かい鶏そば」という温メニューもあったので、今回それをベースにしているのかもしれません。
ちなみにフタの裏には、講談社が運営するコミックDAYS『会長 島耕作(1)』STEP1にリンクする二次元コードが印刷されています。菊池店主がモデルの人物も登場する「港屋×島耕作」3話分が無料で公開されているので、お湯を注いでから待っている間、もし時間を持て余していたら読んでみてください。
製品詳細情報・購入価格等
製品名:島耕作も愛した幻の立ちそば 虎ノ門 港屋 辛香るラー油の鶏そば 製造者:日清食品株式会社 製造所:静岡工場(F)静岡県焼津市相川17-2 内容量:95g(めん72g) 商品コード:4902105261118(JANコード) 商品サイズ:縦 109mm×横109mm×高さ119mm 発売日:2019年9月9日(月) |
麺の種類:油揚げ麺 スタイル:縦型ビッグ 容器材質:紙 湯量目安:430ml 調理時間:熱湯5分 小袋構成:1袋(辛香るラー油) |
原材料名とアレルギー表示
【原材料名】油揚げめん(小麦粉(国内製造)、そば粉、植物油脂、植物性たん白、食塩、しょうゆ)、スープ(食塩、植物油脂、粉末しょうゆ、糖類、豚脂、香辛料(胡椒、花椒、山椒)、チキン調味料、かつおぶし粉末)、かやく(ごま、味付鶏肉、ねぎ)/調味料(アミノ酸等)、加工でん粉、カラメル色素、リン酸塩(Na)、炭酸Ca、酸味料、香料、増粘剤(グァーガム)、甘味料(スクラロース、アセスルファムK)、酸化防止剤(ビタミンE)、香辛料抽出物、カロチノイド色素、ビタミンB2、ビタミンB1、(一部に小麦・そば・乳成分・ごま・さば・大豆・鶏肉・豚肉を含む) |
実食開始
麺は油で揚げた太い蕎麦、しかも今回のために作った新開発の太蕎麦とのこと。2018年11月26日に発売された「日清のどん兵衛 和山椒香る旨辛ラー油太そば」(どんぶり型)にも熱湯5分の太い蕎麦が採用されていて、それは明らかに普段の女性的で繊細な蕎麦とは違う、しっかり田舎蕎麦ライクな太蕎麦に仕上がっていました。
別添の「辛香るラー油」は後入れで、お湯を注いでから待っている間にフタの上で温めます。それを投入した瞬間、かなり胡麻油の芳ばしい香りが漂ってきていい感じなんですけど、実は今回の容器側面(菊池店主のイラスト上)に表示されている辛さレベルは5段階中 “レベル1” なので、かなり辛さは弱い模様。
というわけで辛さには期待できそうにありませんし、お店で特徴的だった刻み海苔は残念ながら別添されていませんが、かなり甘濃くて芳ばしい香りが食欲をそそってくる実食前の現在。新開発の太蕎麦と実店舗で提供されていた「温かい鶏そば」のイメージも軽く意識しつつ、「めん」「つゆ」「具材」の特徴を解説し、カップ麺としての総合力を判定します。
栄養成分表示:1食(95g)当たり
カロリー:417kcal |
参考値(調理直後に分別して分析) 熱量:417kcal(めん・かやく:351kcal)(スープ:66kcal) |
※当ブログに掲載している「原材料名」及び「アレルゲン情報」並びに「栄養成分表示」などの値は実食時点の現品に基づいたもので、メーカーの都合により予告なく変更される場合があります。ご購入・お召し上がりの前には、お手元の製品パッケージに記載されている情報を必ずご確認ください。 |
めん
見た目は縮れの少ない洗練されたストレート麺ですが、実際は麺1本ずつの独立心が強く、ややゴワついた質感。しかし、そのゴワつきや中心部にある “こりこり” とした独特の歯応えが特徴的なポイントで、アルデンテどころではないコシの強さを誇っていた「港屋」の力強くて独創的な剛麺を彷彿とさせます。
やや断面は扁平で、完全な正方形ではありませんが、「日清のどん兵衛 天ぷらそば」や「鴨だしそば」などに使用されている熱湯3分の蕎麦より一見して明白に太いサイズ。エースコックの「厚切太麺」や東洋水産(マルちゃん)の「本気盛」ほどではないけれど、日清食品の和風タテ型カップそば史上最太麺かもしれません。
かなり自己主張の強い太蕎麦でありながら、油揚げ麺特有の野暮な風味は比較的に控えめで、しっかり蕎麦粉の香りは強く、熱湯5分ジャストでフタを開けても目立った戻りムラが見られないのも技術力の高さを物語っているポイントのひとつ。麺量は72gと中途半端な量ではあるものの、噛み締めるたびにコリッと弾ける個性的な弾力に菊池店主のこだわりが投影されているようでした。
つゆ・辛香るラー油
辛香るラー油を入れる前に味を確かめてみたところ、やはり味は見た目どおりの濃口で、たくさん飲むと後から喉が乾きそうなタイプ。醤油は粉末で刺激を感じますが、糖類に加えてスクラロース(砂糖の約600倍の甘さ)やアセスルファムK(砂糖の約200倍の甘さ)といった人工甘味料を重ねているため、体感的な食塩の塩カドはヤスリがけされている状態。
けっこう舌に纏わり付いてくる甘さなので、人工甘味料が苦手な方は鼻につくかもしれませんが、甘さが前に出る「港屋」のカエシを彷彿とさせます。そして花椒や山椒、黒胡椒といった唐辛子のカプサイシンとは違う香辛料のアクセントがあり、中でも “黒胡椒” は今回のモデルと思われる「温かい鶏そば」の特徴だったので、ここも一般的な蕎麦つゆと違う見所のひとつ。
別添の特製「辛香るラー油」を投入すると、瞬く間に広がる胡麻油の芳ばしい香り。構成としては胡麻油が多めの “ごまラー油+豚脂” といった内容の調味油で、辛さレベルが5段階中「1」となっているように、ほぼほぼ辛くないです。微塵も辛くないわけではないけれど、ピリ辛の中でも辛さは弱いので、よほど極端に辛い食べ物が苦手でなければ構える必要はありません。
なのでラー油の辛さに期待していると物足りなさを感じる反面、ごま油の香りは盛大に幅を利かせてくるため、辛香るラー油の存在感は大。かなり甘い上に唐辛子は弱く、香りモノの蕎麦なのに胡麻油が強烈に主張してくるなど、自由奔放かつ個性的で人を選ぶ蕎麦つゆに仕上がっているのですが、どこか不思議と団結力があり、食べ終わる頃には異様な中毒性を覚えていました。
具材
原材料名の並びが “ごま、味付鶏肉、ねぎ” となっているように、実はもっとも具材の含有量として多いのは胡麻で、けっこう大量に入っています。真上の写真には少しだけしか写っていませんが、「つゆ」の写真にチラホラ浮いていたように、実際かなり胡麻の量は多く、麺や具材を食べ終えた後は思いのほか容器の底に溜まっていました(※定期的に混ぜながら食べましょう)。
ネギは大きくカットされた白ネギが目立っていたのですが、実は小さな青ネギも多く、白ネギは具材系の存在感とネギの甘味を打ち出し、青ネギはアクセント系のシャキッとした食感で自己アピール。鶏肉は白い蒸し鶏ほどソフトな食感ではないけれど、噛めば噛むほど味が出る具材。
ただ、いかんせん鶏は量が少ない上に小さいので、とりあえず「鶏そば」の体裁を保ってはいるものの、主役級の存在ではありません。辛香るラー油の動物油脂も鶏油(チーユ)ではなく豚脂(ラード)ですし、なにより寂しかったのは “刻み海苔” が入っていないこと。麺と蕎麦つゆの満足度で気にならないといえば気になりませんでしたが、もう捻り欲しかったですね。
総評
★★★★★☆☆☆☆☆(★5+)
メーカー希望小売価格228円(税別)といえば、同社の「カップヌードル ビッグ」(税別220円)より8円も高いので、もうちょっと具材も頑張ってほしかったところではあるものの、中心部にコリッとした歯応えを残す新開発の麺は面白く、中毒性の高い甘辛濃いめの蕎麦つゆも魅力的で、ところどころ「港屋」らしい再現度の高さを感じるポイントが見え隠れしていました。
とりあえずラー油の辛さは弱いので、その点については心配ご無用。逆に人工的な甘さがターニングポイントになりますが、ラー油の浮いた甘辛い濃口つゆさえ大丈夫ならコンビニ購入でも試してみる価値はあると思います。もし不安な方は、刻み海苔と黒胡椒を多めにトッピングしてアレンジすると甘さが和らぎますし、お店の味にも近付くので、よかったら試してみてください。