どうも、taka :a(@honjitsunoippai)です。
本日の一杯は、2022年11月29日(火)新発売、ローソン名店シリーズのカップ麺「湯の台食堂 中華そば」の実食レビューです。
こんなところに行列が!? 秋田県にかほ市の山奥で絶大な人気を博す無化調らーめん専門店「湯の台食堂」ついにカップラーメンを初監修!!
実際に食べてみた感想と経験に基づいて評価し、カップ麺としての総合力を判定します。よろしければ、最後までお付き合いください。
湯の台食堂 中華そば
湯の台食堂(ゆのだいしょくどう)とは、秋田県沿岸部の最南端・にかほ市は象潟(きさかた)町に聳える鳥海山(ちょうかいさん)の麓に店を構え、そこまでの移動には車が必須かつ周辺にコンビニやスーパーもない田園風景の中にありながら、営業中は連日行列が絶えないことで知られる無化調らーめん専門店で、マニアの間でも一目置かれている存在です。
今回の新商品「湯の台食堂 中華そば」は、コンビニの中でもローソンにしか売ってない、販路限定(PB)のカップラーメンで、製造者はマルちゃんのブランドで知られる東洋水産。湯の台食堂を代表する佐々木優作(ささき ゆうさく)店主監修のもと、鳥海山の麓で奇跡の行列を作り出す「中華そば」が再現されました。というわけで、実食の前に「湯の台食堂」の歴史について少し触れておきましょう。
もともと「湯の台食堂」は、1980年(昭和55年)に “地域の食事処” として創業し、佐々木優作さん(現店主)の母を中心に4軒の店が合同で経営していたそうですが、2016年(平成28年)3月に惜しまれながらも閉店します。しかし、それを聞いた当時の佐々木さんは、自分の田舎が廃れていくのは寂しいから‥‥と、同じ場所で「湯の台食堂」をラーメン店にリニューアルすることを決意しました。
というのも佐々木さんは、千葉県松戸市のレジェンド店「中華蕎麦とみ田」の3号店に当たる「雷(かみなり)本店」出身の経歴を持ち、同店で修行すること2、3ヶ月。その短期間で仕込みを任されるまでに成長したそうですが、もしも自分が独立するとして、そのときに作りたいラーメンではないと「雷 本店」を半年で離れることになり、今度は都内の人気店「麺や七彩(しちさい)」で働き始めます。
「麺や七彩」といえば “我々は味の素が嫌いです” の看板で話題になったほど、いわゆる “うま味調味料” を使わないラーメンを特徴としていますが、それだけではありません。スープを取るときは鶏を捌くところから始まり、麺やトッピングに至るまで、とにかく素材感を大切に、手間をかけるのは当たり前のスタンス。
その現場に感銘を受けた佐々木さんは「麺や七彩」と「食堂七彩」で修行を重ね、2017年(平成29年)10月3日に「湯の台食堂」を “無化調らーめん” の専門店としてリニューアルオープン。打ち立てにこだわった自家製麺をはじめ、大量のモミジ(鶏の足)や鶏の胸肉から抽出した動物系のスープに、昆布・煮干し・鰹節・鯖節から抽出した魚介系のスープを合わせる渾身のダブルスープを確立。
かえしに使う醤油は、秋田県湯沢市にある石孫本店の丸大豆天然醸造醤油「百寿(ひゃくじゅ)」に、香川県小豆島にあるヤマロク醤油の再仕込み醤油「鶴醤(つるびしお)」と「菊醤(きくびしお)」を独自のバランスでブレンド。もちろんチャーシューも自家製で、ロースとバラの2種を使い、それを麺が見えなくなるほどトッピングした “喜多方インスパイア” の「肉そば」も代表的な人気メニューです。
そんな「湯の台食堂」監修のカップ麺には、東洋水産が誇る “生麺ゆでてうまいまま製法” の訴求があり、これは同社の「マルちゃん正麺(せいめん)カップ」が確立した独自技術(特許 第5719064号)のこと。すでに体験済みの方も多いかと思いますが、これを使うと問答無用で正麺カップの印象が強く出る傾向があるので、ちゃんと「湯の台食堂」の個性が伝わってくるのかどうかに注目です。
——そういえば2021年6月25日より、秋田県のローソン店舗限定で「湯の台食堂」監修の日配品「冷たい中華そば」と「チャーシュー飯おにぎり」を販売していたようですが、即席カップめんの監修は前例がありません。
開封
今回のカップ麺に別添されている小袋は、先入れの「かやく」に、後入れ「液体スープ」と「粉末スープ」の計3種。わざわざ添付調味料を “後入れ” と指定しているのは、おおむね麺の戻りに関する懸念(スープ類を先に入れてしまった場合、適切に戻らなくなるから)が理由なので、メーカーの指示に従ってください。
麺は文字通り生の麺を茹でて乾燥させる「生麺ゆでてうまいまま製法」を駆使した乾燥麺で、インスタントラーメンの製造には必須といっても過言ではない “麺を蒸熱する(蒸して熱する)工程を挟まない” ことから、厳密にいうとノンフライ麺ではないんですけど、大別すればノンフライ麺に該当します。やはり見た感じ、正麺カップに通じるところがありますね。
ローソン標準価格は298円(税込322円)に設定されているため、カップラーメンとしては高級品に位置しますが、2022年6月1日出荷分より業界全体で実施された価格改定(メーカー希望小売価格の引き上げ)以降、コンビニで300円オーバーの商品も珍しくない時代になりました。地味にツラい‥‥w とはいえ高価格帯の商品であることは明白なので、値段との兼ね合いにも注目しながらレビューします。
製品詳細情報・購入価格等
製品名:湯の台食堂 中華そば 製造者:東洋水産株式会社 製造所:関東工場(群馬県館林市赤生田本町3831-1) 内容量:115g(めん75g) 商品コード:4901990372401(JAN) |
発売日:2022年11月29日(火) 実食日:2022年11月30日(水) 発売地域:全国 取得店舗:コンビニ(ローソン) 小売価格:298円(税別) 購入価格:322円(税込) |
麺の種類:生麺ゆでてうまいまま製法 スタイル:大判どんぶり型 容器材質:プラ(PS) 湯量目安:410ml 調理時間:熱湯5分 小袋構成:3袋(液体スープ・粉末スープ・かやく) |
原材料名とアレルギー表示
【原材料名】めん(小麦粉(国内製造)、でん粉、食塩、植物性たん白、こんにゃく、植物油脂、乳糖、大豆食物繊維)、添付調味料(しょうゆ、魚介エキス、ポークエキス、香味油脂、チキンエキス、ラード、植物油、砂糖、香辛料、魚醤、たん白加水分解物、こんぶエキス)、かやく(焼豚、メンマ、ねぎ)/ 加工でん粉、調味料(アミノ酸等)、酒精、かんすい、カラメル色素、炭酸カルシウム、レシチン、酸化防止剤(ビタミンC、ビタミンE)、増粘多糖類、クチナシ色素、ビタミンB2、ビタミンB1、(一部に小麦・卵・乳成分・さば・大豆・鶏肉・豚肉・ゼラチンを含む) |
実食開始
別添の小袋は「かやく」のみ先入れで、内容は丸いチャーシューが1枚に、端材系のメンマ、そしてFD加工のネギだけとシンプルな布陣。実際の「中華そば」もトッピングはシンプルですが、じっくり焼いて余分な脂を落としたバラ肉のチャーシューに、8時間〜10時間かけて低温調理したロース肉のレアチャーシューなど、上記の「かやく」からは想像できないほど極上なので、ここは妥協すべきポイント。
前述のように添付調味料(液体スープ、粉末スープ)は2袋とも後入れなので、かやくを入れてから熱湯を内側の線まで注ぎ、フタの上で「液体スープ」の小袋を温めながら待つこと5分。時間になったら箸で麺を解し、それから「粉末スープ」と「液体スープ」を馴染ませるとスムーズなので、調理の際は一手間を意識してみてください。
さて、鰹の膨よかな香りも然る事乍ら、そこに切れ込む黒胡椒の清涼感が印象に残るファーストインプレッション。コンビニのローソン限定かつ税込322円の商品なので、コストパフォーマンス的な部分にも注目しつつ「めん」「スープ」「かやく」の特徴を解説し、カップ麺としての総合力を判定します。
栄養成分表示:1食(115g)あたり |
カロリー:382kcal たん白質:12.5g 脂 質:9.9g 炭水化物:60.8g 食塩相当量:6.0g (めん・かやく:1.8g) (スープ:4.2g) ビタミンB1:0.27mg ビタミンB2:0.32mg カルシウム:184mg |
参考値(調理直後に分別した値) 熱量:382kcal(めん・かやく:303kcal)(スープ:79kcal) |
※当ブログに掲載している「原材料名」及び「アレルゲン情報」並びに「栄養成分表示」などの値は、実食時点の現品に基づいたもので、メーカーの都合により予告なく変更される場合があります。ご購入・お召し上がりの前には、お手元の製品に記載されている情報を必ずご確認ください。 |
めん
正麺カップの流れを汲んでいるため品質は高い
店舗の「中華そば」に使われている麺は、その日に製麺機で打った自家製麺で、小麦粉をミキシングする際にオリーブオイルを使っているのも “こだわり” のポイント。小麦粉は「銀河のちから」(大潟村産の強力粉)に「春よ恋」(北海道産の強力粉)と「ちくご麦畑」(九州産の中力粉)を独自の配合でブレンドし、加水率は55%程度(冬は60%程度)に上げているため、うどんのような弾力も楽しめます。
また麺を茹で上げる直前に手で揉み込み、ランダムな縮れを施しているのも「湯の台食堂」の麺を象徴する特徴で、あえて柔らかめに茹で上げられているのですが、それを再現したカップラーメンの麺は比較的に縮れが弱く、食感も固茹でのイメージ。密度の高さと程よい小麦の風味に加え、雑味のなさも評価すべきポイントになるけれど、食べ頃はスープが馴染む後半になってから。
たとえば既存の「マルちゃん製麺 カップ 芳醇こく醤油」に使われている麺と比較して、それよりかは厚みがあり、やや縮れも強めに施されてはいるものの、2021年9月6日に実施されたリニューアル以降の仕様を漏れなく踏襲しています。もっと加水率を上げるとか、あえて柔らかめになるように配合を変えるとか、箸で持ち上げたときの重量感を復活させるなど、そろそろテコ入れが必要かもしれません。
スープ
黒胡椒の効かせ方が絶妙
まずは「粉末スープ」を舐めてみたところ、いわゆる “うま味調味料” 特有の味が舌に残るので、そこは実際のスープと大きく異なる点になりますが、使用している魚粉は鰹を中心に、けっこう明確に主張してくる粗挽き胡椒(ブラックペッパー)の清涼感が絶妙で好印象。実際の「中華そば」も丼の底に黒胡椒が沈みがちなので、やや強めの清涼感は再現度を高めることに寄与しています。
続けて「液体スープ」には鰹から抽出したオイルが入っているのか、魚粉とは異なる芳ばしい鰹の表情が加わって、いっきに膨よかなテイストに。動物系は鶏よりも豚に振っているので、そこはマルちゃんオリジナルのデフォルメになりますけど、パワーバランスは動物系よりも魚介を立てたフレームワーク。しょうゆ感も程よく複雑で、塩分的な攻撃性を抑えつつ、後味に残る若干の酸味も印象的。
さらに魚醤で深みを与えていたり、昆布で旨みの底上げを図っていたり、そこに黒胡椒を違和感なく調和させていたり、いわゆる下町の「中華そば」とは異なるベクトルで、特筆するほど煮干しは目立っていませんが、税込322円という値段相応の価値は充分に感じられると思います。もう食べ終わるかなって頃、けっこう黒胡椒が容器の底に残っていたので、定期的に混ぜなから食べ進めるのがいいかも。
かやく
チャーシューに注目
店舗の「中華そば」には「麺や七彩」の遺伝子を感じる細切りのメンマがトッピングされているのに対し、カップ麺でのメンマは使い回しの小さな資材だったので、値段的に「激めん ワンタンメン」などに使っているレトルト調理品を使ってほしかったところ。ただ、ネギはフリーズドライで風味がよく、こちらは少量でも効果的。
また東洋水産の大判どんぶり型に使われるチャーシューといえば、正麺カップの四角いバラ肉チャーシューを除き、サイズは薄くて味付けは強く、プリっとした成型肉特有の食感が目立つ丸型のチャーシューが主流となっているのですが、それよりも厚みがあることに加え、噛んだ時の肉感もワンランク‥‥いや、ツーランクほど上のクオリティ。
もちろん日清食品の厚切焼豚には負けますし、カップラーメンの枠を出るような品質ではないけれど、思っていた以上に食べ応えがあったので、評価に星ひとつプラスしました。
総評
どうしても正麺カップの色が強く出てしまう「生麺ゆでてうまいまま製法」の乾燥麺に、かやくの内容もカップラーメンだからと妥協すべき部分になりますが、黒胡椒の清涼感が絶妙に主張してくる動物系×魚介系のWスープは「湯の台食堂」の “こだわり” を感じるポイント。
販売店はローソン限定かつ税込322円の商品なので、ちょっと総評から差し引きましたけど、それを踏まえてもスープには値段相応の価値を感じました。おそらく多くのローソンで取り扱われていると思うので、前述のWスープと黒胡椒の組み合わせに魅力を覚えた方は、最寄りのローソンをチェックしてみてください【author・taka :a(大石敬之)】