どうも、taka :a(@honjitsunoippai)です。
本日の一杯は、2024年6月3日(月)新発売、ヤマダイのカップ麺「手緒里庵 冷やし手延そうめん」(275円+税)の実食レビューです。
最強のノンフライそうめんを冷製アレンジ!? 手延素麺 揖保乃糸(てのべそうめん いぼのいと)使用、ニュータッチが業界の常識を覆しかねない一杯を展開!!
実際に食べてみた感想と経験に基づいて評価し、カップ麺としての総合力を判定します。よろしければ、最後までお付き合いください。
手緒里庵 冷やし手延そうめん
手緒里庵(ておりあん)とは、ノンフライで体にやさしい、幅広い世代の方におすすめの和風カップ麺をコンセプトにしたブランドで、製造者はニュータッチのヤマダイ。以前はノンフライそばもラインナップに含まれていたのですが、そちらは凄麺(すごめん)の逸品シリーズに移籍したことに伴い、現在は手延素麺「揖保乃糸」を使用した “そうめん„ を主力商品としています。
このページでレビューする「手緒里庵 冷やし手延そうめん」は、煮麺(にゅうめん)として通年販売されている「手延そうめん」とは違う、このブランドでは初となる冷やしメニューで、揖保乃糸を使用した自信作。かれこれ9年以上も前に、煮麺の「手延そうめん」は非の打ち所がない名作だと感銘を受け、以降はレビューを封印しているのですがw その冷やしバージョン‥‥これは黙っていられません。
あらためして揖保乃糸(いぼのいと)とは、1894年(明治27年)に誕生し、1906年(明治39年)に当時の特許局(現在の特許庁)から認可を受けた「兵庫県手延素麺協同組合」の商標で、現在は西播磨(はりま)の3市2町(たつの市、姫路市、宍粟市、揖保郡太子町、佐用郡佐用町)に分布する、同組合の揖保乃糸生産組合員に属した約400軒の生産者(約2,000人)が製造に従事。
揖保乃糸の誕生は130年前ですが、その製法は播磨地方に600年以上前から存在する技術を受け継いでおり、こね前工程・板切工程・小より工程・掛巻工程・小引き工程・小分け工程・門干し工程・切断工程・計量結束箱詰工程・製品検査工程・倉庫熟成工程の “計11工程„ を経て完成するのですが、なかでも「門干し工程」の風景はネット、テレビ等でご覧になった方も多いかと思います。
それは掛巻機(かけばき)という機械を使い、こね前工程〜小より工程を経た麺紐に縒(よ)りを持たせながら、8の字を描くよう掛巻機に掛け、素麺を熟成させる室箱(おも)で3時間ほど寝かせる「掛巻工程」からスタート。天候などを考慮しつつ、熟成を終えた麺紐を「小引き工程」で50cmほど引き延ばし、またもや室箱に放り込まれて熟成を待つこと15時間。
その麺紐を1.3mまで延ばす「小分け工程」を挟み、1.3mの麺紐を8〜9本ずつハタ(素麺を乾燥させる干し台)に掛け、ゆっくりと1.6m〜2mに延ばした後、長いハシで均等に捌いていく——これが「門干し工程」の中でも印象的なシーン。私は幼い頃、たつの市に連行されて経験したことがあるのですが、あのときは模型? みたいなの使ったんだっけ‥‥。
その作業があるからこそ、業界で “機械そうめん„ と呼ばれている大量生産品には出せない、手延べ特有のコシを備えた「揖保乃糸」が世に送り出されているのですが、主に重宝されるのは夏でも製造時期は10月〜4月(最盛期は12月〜2月)。専用の保管庫で1年以上熟成させた素麺は「ひね(陳、老成)」と呼ばれ、さらに黒帯の特級、赤帯の上級、紫帯の縒(より)つむぎ、金帯の熟成麺、緑帯の播州小麦、赤紫帯の太づくりなどの等級があり——
選りすぐりの職人だけが製造を許された最高位のランク「三神」も存在するのですが、手緒里庵の「冷やし手延そうめん」に使われているのは‥‥なんでしょう。コスト的にベーシックな赤帯? よく見ると「揖保乃糸」とは原材料が異なるため、等級以外の秘密も隠れていそうですけど、なにはともあれ、しっかりと見定めなければいけません。
開封
そういえば「冷し」じゃなくて「冷やし」の表記は(焼そばの「き」よろしく「や」も省略した商品が多いため)珍しいなーと思いつつ、さておき今回のカップ麺に別添されている小袋は「液体つゆ」「かやく」「かつお節」の計3パックで、いずれも食べる直前に使う仕様。かやくには紀州産の南高梅フレークや赤じそ、青ねぎを使っているらしく、かつお節も焼津産と気合は充分。
でもって気になるノンフライそうめんは、表面に凄麺よろしくオブラート状の物質が見られるように、市販されている「揖保乃糸」とは異なるビジュアルで、やや縮れが見られるところも然り。そもそも “お湯を注ぐだけで戻る状態にしなければいけない„ ため、ヤマダイの工場で蒸す、あるいは茹での工程を挟んだ後、熱風で乾燥させているのかもしれません。
ちなみに「凄麺」のメーカー希望小売価格は、定番商品だと255円(税別)を基準にしているのに対し、今回の「手緒里庵」は275円(税別)と高めに設定されているのですが、そもそも “凄麺が安すぎる„ のですよ。あのクオリティを、この時世に255円(税別)で販売とか、どうかしているとしか思えないw(ほんと頭下がります)。
製品詳細情報・購入価格等
製品名:手緒里庵 冷やし手延そうめん 製造者:ヤマダイ株式会社 製造所:本社工場(茨城県結城郡八千代町平塚4828) 内容量:95g(めん50g) 商品コード:4903088017242(JAN) |
発売日:2024年06月03日(月) 実食日:2024年08月18日(日) 発売地域:全国 取得店舗:スーパー 小売価格:275円(税別) 購入価格:278円(税込) |
麺の種類:ノンフライ麺 スタイル:大判どんぶり型 容器材質:プラ(PS) 湯量目安:540ml 調理時間:熱湯3分 小袋構成:3袋(液体つゆ・かやく・ふりかけ) |
原材料名とアレルギー表示
【原材料名】めん(小麦粉(国内製造)、食塩、植物油脂、大豆食物繊維)、つゆ(しょうゆ、糖類、食塩、鰹節、鰹節エキス、煮干エキス、宗田鰹節、米発酵調味料、昆布、焼あご、シイタケパウダー、酵母エキス)、かやく(鰹節、ねぎ、梅加工品、赤シソ)/ 酒精、調味料(核酸等)、酸化防止剤(ビタミンE)、酸味料、(一部に小麦・乳成分・大豆を含む) |
実食開始
調理方法は、昨今の冷やし系で定番となっている “熱湯で麺を戻した後、湯切りして冷水を注ぎ、湯切り口から水を捨て、麺を引き締める作業を2〜3回繰り返す„ ことを必要としているのですが、油揚げ麺ではなくノンフライ麺なので、面倒な方はザルを使って揉み洗いもアリかなと(ノンフライ麺だからザルを推奨している理由は、油揚げ麺と違ってザルが汚れにくいからってだけの話なんですけど)。
ただ、いずれにせよ気を付けたいのが麺を冷やす前の一手間で、熱湯を注いでから3分後、湯切り前に “めんをよくほぐしてから„ お湯を捨て、それから冷やすこと。麺を冷やし終えたら「液体つゆ」を入れ、仕上げに「かやく」と「かつお節」をトッピングしたら出来上がり。液体つゆ投入後に混ぜる、混ぜないについての指示は見当たらないので、自分の好みに合わせたらいい様子。
——あ、それから「液体つゆ」の取り扱いについて。うっかり私もミスったことがあるんですけど、冷やし商品ですから “フタの上で液体つゆを温めないように注意„ してください。それでは、念のためコストパフォーマンス的な部分にも注目しつつ「めん」「つゆ」「かやく」の特徴を解説し、カップ麺としての総合力を判定します。
栄養成分表示:1食(95g)あたり |
カロリー:210kcal たん白質:6.7g 脂 質:0.2g 炭水化物:45.4g 食塩相当量:3.0g |
※当ブログに掲載している「原材料名」及び「アレルゲン情報」並びに「栄養成分表示」などの値は、実食時点の現品に基づいたもので、メーカーの都合により予告なく変更される場合があります。ご購入・お召し上がりの前には、お手元の製品に記載されている情報を必ずご確認ください。 |
めん
カップ麺のクオリティじゃねぇ
カップではない「揖保乃糸」を調理する際は、大きめの鍋に多めの熱湯を準備し、その中でグラグラと踊らせるため、それを熱湯3分で完全に再現するのは難しいのではないかと。実際に茹で上げ直後の素麺とノンフライそうめんを比較して、完璧に同じかと聞かれたら、どうしても顕著に感じてしまうのはコシの違い。
せっかくブランド品の「揖保乃糸」を使用しているのに、どうしても茹で置き感が否めないというか、ちょ〜っと茹で過ぎたかも‥‥くらいの差は感じると思います。つまり、その程度。もともと素麺は保存食なので、それについてのステータスが大幅に優っているとはいえないけれど、茹でずにコレは異常事態。再現度の高さでいえば “ゆでたての旨さ、再現„ を標榜している「凄麺」を余裕で上回るレベル。
ちょ〜っと茹で過ぎたかも‥‥の解決策としては、湯戻し時間を早めに切り上げるのではなく、きちんと時間を守った後、事前に用意した氷水でガチめに引き締めるのが最善。そこまですれば “クソ暑い日に鍋を使って茹で上げた揖保乃糸と遜色ない水準„ に到達するため、調理前の麺重量は50gと少ないところが玉に瑕ではあるけれど、今回は即席カップめんの枠を超越したクオリティに目を向けてみてください。
つゆ
お店かな?
そうめん専門店に行ったことはないので、お店かな? というのは私のイメージですけど、いい意味で家庭的じゃない(よくある希釈タイプの「めんつゆ」とは違う)臨場感たるや。公式曰く “2種の醤油と5種のだし(鰹節、宗田鰹節、焼あご、真昆布、椎茸)を使用„ ということで、醤油感も出汁(だし)感も強いのですが、攻撃性やエグみは皆無。
真っ先に飛び込んでくるのは醤油と鰹(イノシン酸)なので、とても分かりやすいのですが、直後に焼あご(トビウオ)の芳ばしさと真昆布(グルタミン酸)の波状攻撃が追い付き、それらを干し椎茸(グアニル酸)が増幅させる、まさに “うま味の相乗効果„ の鏡といっても過言ではない設計。やや甘さのベクトルは人工的ですが、嫌味ではなかったです。これ単体で売ってもらえませんかね?
かやく
盛りあげ上手
めんつゆには当たり前に入っていますが、ぶっかけ系の手延べ素麺に鰹節をトッピングした経験がなかったので、けっこう新鮮。素麺の口当たりが悪くならない? とか、液体つゆでは気にならなかったエグみや臭み出てこない? とか、ちょっと心配していたんですけど、それらについては杞憂に終わり、液体つゆとの相性も申し分なく、鰹節の直掛けも薄削ならアリだなと。
ただ、それ以上に効果的だったのが梅と赤じそで、ちょいちょい飛び込んでくる酸味が食欲を刺激。すでに暦は立秋(りっしゅう)を過ぎておりますが、どうにも食欲が湧きづらい日もありますし、二日酔いの日にも嬉しいアクセントになると思います。ネギは‥‥ちょっと風味が悪かったw(お店で直射日光が当たる場所に置かれていたから、それが原因かも)。
総評
東洋水産、エースコック、日清食品など、今年は例年以上に冷やし系の商品が目立っていましたが、揖保乃糸を使用した「冷やし手延そうめん」はヤマダイだけ。それを最大限に楽しむには氷を用意するのがベストではあるけれど、あらかじめ冷蔵庫で水を冷やしておくだけで随分と変わりますし、これを茹でずに楽しめるとか、ほんと革命ばっかり起こしやがって。
凄麺の定番ラインナップよりも値段が高く、それでいて麺重量が少なめである部分はネックになりますけど、これは探してでも試したほうがいい一杯。発売日は2ヶ月前ですが、現段階まだニュータッチの公式Xアカウントもアピールを続けている旬の商品なので、見かけたら販売期間中に確保してください。【author・taka :a(大石敬之)】