どうも、taka :a(@honjitsunoippai)です。
本日の一杯は、2022年6月20日(月)新発売、明星食品のカップ麺「明星 大砲ラーメン 呼び戻し風とんこつ味」の実食レビューです。
半世紀以上継ぎ足し続けた「呼び戻し」のコク深い旨みを再現「大砲ラーメン」監修のカップラーメンに満を持す “どストレート” な展開!!
実際に食べてみた感想と経験に基づいて評価し、カップ麺としての総合力を判定します。よろしければ、最後までお付き合いください。
大砲ラーメン 呼び戻し風とんこつ味
大砲ラーメン(たいほうらーめん)とは、とんこつラーメン発祥の地・福岡県久留米市は櫛原(くしわら)に本店を置く老舗の豚骨ラーメン専門店で、1953年(昭和28年)初代店主・香月昇(かつき のぼる)その人が久留米市明治通りに開業した一軒の屋台が前身。2022年6月現在の店舗数は、九州地区でのみ11店舗を展開しています。
今回の新商品「明星 大砲ラーメン 呼び戻し風とんこつ味」は、半世紀以上にわたりスープを継ぎ足し、釜を空にすることなく炊き続けた「大砲ラーメン」の伝統技法 “呼び戻し” の味わいを再現したカップラーメンで、東京都渋谷区に本社を構える明星食品と共同開発。これまでに何度もコラボを続けている明星×大砲ラーメンですが、縦型ビッグの「呼び戻し風とんこつ味」は前例がありません。
今でこそ濃厚な豚骨ラーメンを提供している専門店で目にする機会が多い「呼び戻し」という表現ですが、呼び戻しの名付け親は「大砲ラーメン」を創業した初代の実子であり、現在は二代目店主を務める香月均史(ひとし)その人で、決められた量の水と豚骨を、決められた火力で決められた時間、ひたすら煮込んで当日に使い切る「取り切り」と区別するための呼び名。
たとえば老舗の鰻屋に代々受け継がれる秘伝のタレがあるように、創業当時から現在にかけて、1日の営業が終了した後も空にしてはいけないスープの釜があり、その古いスープに別の釜で取った若いスープを少しずつ継ぎ足しながら、絶えず炊き続けるのが「呼び戻し」という独特の技法。文字にするのは簡単ですが、ただ古いスープに新しいスープを足せば済む話ではありません。
「呼び戻し」の定義を満たすスープを作るには、清湯(ちんたん)用の寸胴よりも熱伝導率が高く、理想的な対流が生まれる “羽釜” が必要不可欠で、刻一刻と変化するスープのブレに対応するために、専任のスタッフが古いスープと新しいスープを常にブレンドし続けなければいけない至高の賜物。ほかにも火加減や水位の調整に、豚骨を混ぜるタイミングなど、素人には真似できない熟練の技が必要です。
「大砲ラーメン」ほどの歴史と確固たる人気を備えた店であれば、もっと多店舗展開しても不思議ではないところ、現在の店舗数は “九州地区でのみ11店舗” と前述したように、いわゆるセントラルキッチン(CK / 集中調理施設)では実現不可能な歴史を誇るため、ハイペースに出店できないのでしょう。しかし、そんな伝統の呼び戻しスープを再現したのが今回のカップ麺。
明星食品と「大砲ラーメン」の関係は、すくなくとも2006年(平成18年)8月に発売された「明星 大砲ラーメン 昔ラーメン」から続いているため、かれこれ15年以上の信頼関係を築いており、その昔ラーメンといえば、2021年3月8日に “15年ぶりのリニューアル” に踏み切ったのは記憶に新しいところ。
関連ページ:呼び戻しの元祖【大砲ラーメン】監修カップ麺「昔ラーメン」発売15年目のリニューアルで変わったこと
ただ、2015年3月23日発売の「neo とんこつ+牛だし」以来、大砲ラーメン監修によるタテ型BIGのカップラーメンは “基本的に変わり種” だったので、ここまでストレートに呼び戻しスープを訴求してきたのは初めての展開。この製品スタイルは大判どんぶり型よりも制約が多いため、一抹の不安がないといえば嘘になりますけど、はたして仕上がりや如何に——。
開封
今回のカップ麺に別添されている小袋は、フタの上に貼り付けてある「調味油」1袋で、それを取り外した先の天面には “まろやかで旨みのあるスープに とんこつの風味とコク深さを加える調味油で仕上げる一杯” と、商品の魅力についての訴求があります。
かやくはチャーシュー、ごま、ネギとシンプルな構成なのですが、ネギは輪切りと斜め切りの2種を組み合わせ、かなり多めのスープが期待を誘うファーストインプレッション。この時点の香りは “ちょっと生臭い” というか、独特の獣臭が備わっています。文字にするとネガティブに思える表現ですけどw ちゃんと濃厚な豚骨スープに見られる特徴の一つ。
メーカー希望小売価格は245円(税別)なので、すこし高めに思えるかもしれませんが、2022年6月1日出荷分から適用されている価格改定前の基準に戻して換算すると、220円(税別)の商品に該当します。つまり、2022年6月1日出荷分からの縦型ビッグにおけるメーカー希望小売価格は245円(税別)が基準になるため、この数字に慣れておいてください。
製品詳細情報・購入価格等
製品名:明星 大砲ラーメン 呼び戻し風とんこつ味 販売者:明星食品株式会社 製造所:R・東日本明星株式会社 埼玉工場(埼玉県比企郡嵐山町川島2360) 内容量:104g(めん75g) 商品コード:4902881453349(JAN) |
発売日:2022年06月20日(月) 実食日:2022年06月24日(金) 発売地域:全国 取得店舗:スーパー 商品購入価格:213円(税込) 希望小売価格:245円(税別) |
麺の種類:油揚げ麺 スタイル:縦型ビッグ 容器材質:紙 湯量目安:350ml 調理時間:熱湯4分 小袋構成:1袋(調味油) |
原材料名とアレルギー表示
【原材料名】油揚げめん(小麦粉(国内製造)、植物油脂、食塩、しょうゆ)、スープ(豚脂、ポークエキス、でん粉、糖類、食塩、たん白加水分解物、小麦粉、香辛料、酵母エキス、香味調味料)、かやく(チャーシュー、ごま、ねぎ)/ 加工デンプン、調味料(アミノ酸等)、増粘多糖類、炭酸カルシウム、香料、かんすい、乳化剤、カラメル色素、酸化防止剤(ビタミンE)、カロチノイド色素、ビタミンB2、ビタミンB1、(一部に卵・乳成分・小麦・えび・ごま・大豆・鶏肉・豚肉・ゼラチンを含む)※本品製造設備では、そば・かに・落花生を含む製品を生産しています。 |
実食開始
先ほどスープの多さについて触れましたが、その下に隠れている麺が問題というか不安なポイントで、明星食品の豚骨といえば業界最高峰の極細ストレート麺(ノンフライ製法のバリカタ麺)ではなく、油で揚げたフライ麺を採用しています。しかも、けっこう無作為に縮れてますよね。スープに注力したが故の妥協なのか、それとも “あえて油揚げ麺” にしたのか、その真意が気になるところ——。
別添の小袋は後入れなので、内側の線まで熱湯を注ぎ、フタをして待つこと4分。調味油には動物性の豚脂(ラード)が含まれているため、待っている間にフタの上で小袋を温めておくのがベスト。その調味油を加えた途端に牙を剥いてくる「大砲ラーメン」らしい獣臭は強烈で、調理後も香りの掴みは悪くありません(※ただし苦手な方は要注意)。
ちなみに “とろみ成分でスープの粘度を人工的に上げていた” ので、調理の際は溶け残りがないよう容器の底から念入りに混ぜ合わせてください。それでは、引き続き呼び戻しスープの臨場感に注目しつつ「めん」「スープ」「具材」の特徴を解説し、カップ麺としての総合力を判定します。
栄養成分表示:1食(104g)あたり |
カロリー:494kcal たん白質:10.4g 脂 質:23.4g 炭水化物:60.4g 食塩相当量:5.4g (めん・かやく:2.1g) (スープ:3.3g) ビタミンB1:0.34mg ビタミンB2:0.38mg カルシウム:274mg |
参考値(調理直後に分別した値) 熱量:494kcal(めん・かやく:399kcal)(スープ:95kcal) |
※当ブログに掲載している「原材料名」及び「アレルゲン情報」並びに「栄養成分表示」などの値は、実食時点の現品に基づいたもので、メーカーの都合により予告なく変更される場合があります。ご購入・お召し上がりの前には、お手元の製品に記載されている情報を必ずご確認ください。 |
めん
これは‥‥ダメじゃない?
実際の店舗で使われている麺は、大砲ラーメンの自社製麺所「麺工房」謹製の中細ストレート麺で、加水率は低めの設定。低加水麺らしい粉っぽさを持たせながら、ある程度のコシを備え、小麦の風味が芳醇に香り、あえての控えめな印象でスープを引き立てながらも埋没することはありません。しかし、対して「呼び戻し風とんこつ味」の油揚げ麺は‥‥
遠慮なく縮れを施した中細麺で、加水率は特別に高いわけでも低いわけでもなく、中盤以降は粘りを伴う質感。お店のラーメンでは味わえないスナック的な歯触りと安っぽい風味は、即席カップめん特有のステータスではあるものの、ここに久留米を代表する老舗「大砲ラーメン」の威厳はありません。
調理前の重量は75gなので、有名店監修の縦型ビッグにおける標準的な麺重量(70g)よりも若干ながら多いものの、カップラーメンとして美味しい油揚げ麺を合わせるのではなく、レギュラーサイズの60gに減らしてでも品質と再現度を重視したノンフライ麺を採用するべきだったんじゃないですかね。
スープ
呼び戻しを履き違えてる感が否めない
たしかにスープの動物系は「豚」を中心に構成しているのですが、半世紀以上継ぎ足し続けたコク深い豚骨(とんこつ)の旨みよりも “ポークエキス” の枠を出ないテイストで、骨粉や骨髄を彷彿とさせる要素は備わっていません。そもそも骨の存在感が弱く、でん粉や増粘多糖類による粘度の高さも糖類の甘さも不自然で、ただクリーミーなだけというか、大砲ラーメンらしからぬ仕上がり。なにがあった?
別添の「調味油」から漂う “むわっ” とした獣臭は、同店監修の「まぜそば」に通じる野趣に富んだ香りなので、ある意味ここは裏切りのないポイントになりますが、それに伴う炊き出し感がスープに備わっていないことが問題。いや、まったりとした炊き出し感はあるんですけど、これは「大砲ラーメン」の呼び戻しスープじゃないよね? っていう根本的な話。
それこそハイスピードでFC(フランチャイズ)展開している呼び戻し風の缶詰スープっぽいというか、取って付けたような濃厚さだったので、違和感を覚えました。
具材
ここは値段相応
諸々の高騰が相次いでいる昨今の即席カップめん業界といえば、本物の肉よりも安価な大豆たん白加工品(フェイクミート)が横行しているため、チップ状の成型肉とはいえ本物のチャーシューは嬉しく、2種のネギも輪切り(熱風乾燥 / エアドライ)と斜め切り(凍結乾燥 / フリーズドライ)で製法を変えているのですが、麺とスープのクオリティを加味すると可も無く不可も無し。
たとえば昔ラーメン用の “カリカリ” とか、そのように個性的な具材が入っているわけではなかったので、ネギの量が2種類かつ多いこと以外は平凡‥‥あ、何気に胡麻も多かったのはよかったです。
総評
今回は “半世紀以上継ぎ足し続けたコク深い旨みを再現” したカップラーメンなので、もとより麺と具材は二の次だったとしても、肝心のスープが人工的すぎるのはナンセンス。これでスープが大判どんぶり型に負けないほどのクオリティであれば、それなりに話は変わってくるものの、いまいち納得できない仕上がりといわざるを得ませんでした。
人を選ぶほどに強烈な調味油のニオイは印象に残ると思いますけど、裏を返すと “それしか印象に残らない” かもしれないので、実食の際は肩の力を抜いて食べることをオススメします【author・taka :a(大石敬之)】