九州の「うまい」をカタチに。とんこつ味のパイオニア『サンポー食品』とカップ麺のレビューブログ『本日の一杯 -Cupmen review blog-』が前代未聞のコラボレーション!!
本日の一杯は、2022年9月26日(月)新発売、サンポー食品×taka :a(@honjitsunoippai)共同開発のカップ麺「究極の一杯 久留米豚骨」の紹介です。
突然の報告になりますが、かねてより敬愛しているサンポー食品から「一緒に商品を作ってほしい」と願ってもないオファーを受け、ひとつのカップラーメンが完成しました。発売までに要した期間は約1年、ここでしか言えない話を交えながら商品の仕様や特徴を紹介しますので、最後までお付き合いいただけますと幸いに存じます。
究極の一杯 久留米豚骨
あらためまして「本日の一杯 -Cupmen review blog-」とは、カップ麺の新商品を中心に評価・レビューしているブログで、始まりは2014年(平成26年)2月28日。とある事情からカップ麺の魅力に取り憑かれ、どうせ食べるなら感想を記録しておくか‥‥程度の薄っぺらい備忘録から始まり、それがエスカレートした結果、まさか本業になるとは思ってもみなかった8年前。
たとえば「カップヌードル」や「スーパーカップ」など、ブログを始める前は誰もが知っている定番商品ばかり食べていたのですが、偶然に量販店で出会ったカップラーメンが驚くほどに美味しくて、数日後に同じ店を訪ねてみたところ、すでに売り切れ。それが実は数量・期間限定のスポット商品だったことを知り、もう二度と食べられないのか‥‥と、ショックを受けたのが「本日の一杯」の始まりです。
詳細な数字はメーカーも完全に把握しきれていないのですが、即席めん業界における1年間の総発売アイテム数は1000以上とされ、その中でも通年販売のレギュラー商品として市場に残るのは、わずか1割にも満たないシビアな世界。さらにインパクトが求められるコンビニ向けの新商品になると、凄まじいまでの回転率を誇り、人気が出ると2週間ほどで姿を消してしまうことも珍しくありません。
一見すると賑やかで楽しい企画にあふれた業界に思えますが、実際は命を懸けた鎬(しのぎ)の削り合い。こんな世界があるのかと商品の魅力を掘り下げていたら、ブログを始めた当初よりも1ページのボリュームが増えてしまったので、どうしても新商品の取り零しは発生するものの、健康上の理由でカップ麺は食べられないけど食べた気になれる! 参考になる! といった声に支えられ、現在に至ります。
そんな私に声を掛けてくれたサンポー食品は、佐賀県三養基郡基山町に本社・工場を置き、即席めん(カップめん、棒状ラーメン)及び乾めんの製造を生業としているメーカーで、現在を遡ること100年以上、1921年(大正10年)1月創業の米穀卸大石商店が起源。私の苗字も現代表取締役社長の大石忠徳(ただのり)氏と同じ “大石” ですが、親子ではありません(たまに聞かれるから念のためw)。
現在は同社の絶対的エース「焼豚ラーメン 九州とんこつ味」と「九州三宝堂」を中心に、九州の即席カップめん市場を牽引し続けている企業で、これまでに著名なラーメン店監修の商品も数多く手掛けているのですが、ブロガーとのコラボレーションは前例のない試み。2021年10月某日、お互いに初めて顔を合わせたとき、こちらが真っ先に提案したのは “いちから商品を作りたい” でした。
つまり “単なる監修ではなく「共同開発」がいい” などと、冷静になって思い返せば恐れ多い話なのですが‥‥w まさかの即座に快諾していただき、共同開発がスタート。コロナ禍という状況から、都道府県をまたぐ移動を可能な限り自粛しなければいけない期間だったので、全国的に新規感染者数が減少したタイミングを見計らい、兵庫県からサンポー食品の本社(佐賀県三養基郡)に一度だけ訪問。
会議室で製造工程の説明を受け、開発しか知らない社内秘の原料を味見させてもらうなど、貴重な体験をし、後日からリモートでの打ち合わせ。まずはサンポー食品に複数のサンプルを送ってもらい、理想の味に近い個体を選ぶ。それをベースに再度サンプルを作ってもらい、実際に食べながら原材料の○○を増やしてほしいとか、△△は入れないでほしいとか、□□を0.01gだけ増やしてほしいとか‥‥
即席カップめん業界は、1銭(100分の1円)単位でコストを調整しなければいけないので、ずいぶんと無茶な注文を投げたと思います。しかし、何度も何度もアップデートしてくれて、本来ならば味の本筋を決めなければいけない時期になってもギリギリまで味の調整に付き合ってくれて、試行錯誤の末に生まれたのが「究極の一杯(きゅうきょくのいっぱい)」と名付けられたカップラーメン。
商品名は「本日の一杯」に由来し、モノトーン基調のパッケージもブログのレイアウトを模したデザイン。こっちはこっちでフォントを変えてほしいとか、改行の位置を変えてほしいとか、文字の大きさ云々とか、シズルを撮り直してほしいとか、デザイナーさんにも多大な迷惑をかけてしまったんですけど、誰も嫌な顔ひとつせずに、とことん向き合ってくれたからこそ完成した、まさに渾身の一杯。
自ら共同開発に携わったカップラーメンに点数を付けるのもアレなので‥‥w このブログで「究極の一杯 久留米豚骨」は評価しませんが、とにもかくにも最大の “こだわり” はスープ。なかでも豚骨に由来する「骨っぽさ」と「鼻に抜ける香り」を徹底的に追求したので、ここから先は商品の仕様や見どころなど、味についての詳細を紹介します。
開封
「究極の一杯 久留米豚骨」に別添している小袋は、先入れの「かやく」と「粉末スープ」に、後入れ「調味油」と「有明のり」の計4種。容器は大盛り用のバケツ型ですが、トッピングの海苔は佐賀の「有明のり」に限定し、麺には福岡県産小麦の “ラー麦” を100%使用するなど、いわゆる大味のカップラーメンではありません。
調理前の麺重量は85gと大盛りバケツ型の平均(90g)よりも若干ながら少なめですが、ラー麦は福岡県が “ラーメンのために開発した小麦” で、福岡の名立たるラーメン店も取り入れている品種。この麺はラードを使用した油で揚げているため、特有の芳ばしさを伴いますが、それもサンポー食品だからこその魅力。今回の共同開発にあたり、ノンフライ麺の採用は選択肢にありませんでした。
メーカー希望小売価格は245円(税別)に設定されているため、2022年9月現在の大盛りカップ麺における標準的な値段。販売店は九州全域のコンビニ(セブンイレブン、ファミリーマート、ローソン、デイリーヤマザキ)やスーパー、ドラッグストアのほか、九州以外ではイトーヨーカドーやドン・キホーテ、ヤオコーなどで取り扱っていただけるようです。
製品詳細情報・購入価格等
製品名:究極の一杯 久留米豚骨 製造者:サンポー食品株式会社 製造所:本社工場(佐賀県三養基郡基山町大字長野230) 内容量:118g(めん85g) 商品コード:4901773101474(JAN) |
発売日:2022年09月26日(月) 発売地域:全国(限定30万食) 希望小売価格:245円(税別) |
麺の種類:油揚げ麺(ラー麦100%使用) スタイル:大盛りバケツ型 容器材質:プラ(PS) 湯量目安:500ml 調理時間:熱湯3分 小袋構成:4袋(粉末スープ・調味油・かやく・有明のり ※標準2枚) |
原材料名とアレルギー表示
【原材料名】油揚げめん(小麦粉(小麦(福岡県産))、植物油脂、ラード、食塩、植物たん白)、スープ(ポークエキス、豚脂、食塩、ポテトパウダー、しょうゆ、たん白加水分解物、植物油脂、香辛料)、かやく(背脂加工品、メンマ、焼のり(有明海産)、ねぎ)/ 加工でん粉、調味料(アミノ酸等)、炭酸カルシウム、乳化剤、増粘剤(キサンタン)、pH調整剤、かんすい、カラメル色素、クチナシ色素、酸化防止剤(ビタミンE)、ビタミンB2、ビタミンB1、香料、(一部に小麦・乳成分・大豆・鶏肉・豚肉・ゼラチンを含む)※本品は、えびを使用した設備で製造しています。 |
実食開始
別添の小袋は「かやく」と「粉末スープ」が先入れで、調理の際は「かやく」をあけてから「粉末スープ」の順に入れる、というのはサンポー食品が長年に亘り訴求している “こだわり” の一つ。今回の粉末スープは1食あたりに許される量の限界まで充填してもらったので、ゆっくりと粉末スープを溶かしながら熱湯を注いでください。
お湯を注いだら3分間、フタの上で「調味油」の小袋を温めながら待ち、時間になったら「調味油」を加え、しっかりと混ぜ合わせるのですが、ここで重要なのが “別添の「有明のり」は途中で使う” こと。今回は「香り」を大切にした一杯なので、最初から海苔をトッピングしてしまった場合、スープと調味油の香りがダイレクトに伝わってきません。
もちろん海苔も「究極の一杯 久留米豚骨」に必要不可欠なアイテムですが、半分〜1/3ほど食べ終えた頃合いに入れるのがオススメ。もちろん強制ではないけれど、特に理由がなければ粉末スープ+調味油の香りに集中してみてください。それでは、引き続き「めん」「スープ」「かやく」の特徴を紹介します。
栄養成分表示:1食(118g)あたり |
カロリー:587kcal たん白質:12.4g 脂 質:32.1g 炭水化物:62.0g 食塩相当量:6.9g (めん・かやく:2.3g) (スープ:4.6g) ビタミンB1:0.40mg ビタミンB2:0.38mg カルシウム:492mg |
※当ブログに掲載している「原材料名」及び「アレルゲン情報」並びに「栄養成分表示」などの値は、実食時点の現品に基づいたもので、メーカーの都合により予告なく変更される場合があります。ご購入・お召し上がりの前には、お手元の製品に記載されている情報を必ずご確認ください。 |
めん
ラー麦100%使用の食感に注目
九州における豚骨系のラーメンといえば「博多とんこつラーメン」のイメージが強く、そちらの地域ではバリカタ仕様の細いストレート麺が定番となっているのですが、それと比較して「久留米とんこつラーメン」の麺は若干ながら太いため、22番の切刃(溝巾1.4mm)で切り出した中細麺を使用。
前述のように調理前の麺重量は85gなので、たとえば「スーパーカップ1.5倍」(エースコック)や「でかまる」(東洋水産)での標準よりも若干ながら少なめですが、こだわり小麦の “ラー麦” で特別感を表現。加水率は低く、食べ始めのコリッとした噛み応えと歯切れのよさが見どころ。だらだらと食べない限り、きちんと最後まで食感が楽しめるように設計してあります。
そして、もうひとつの見どころが揚げ油に由来するラードの風味。これはサンポー食品の油揚げ麺に共通して当てはまることで、生麺やノンフライ麺にはない独特の芳ばしさを伴うのですが、それも想定内。むしろ油揚げ麺の風味と後述の「調味油」が共鳴するバランスが真骨頂といっても過言ではないので、もしもノンフライ麺に限定されていたら「究極の一杯 久留米豚骨」は完成しなかったでしょう。
スープ
粉末スープは骨っぽさと炊き出し感を意識
粉末スープの主原料となっているポークエキスは、舌に残る骨っぽさと鼻に抜ける豚脂の芳ばしさが最大限に出る配合を模索し、清涼感を持つペッパーなどの香辛料は最小限に抑え、しょうゆの効かせ方も香り付け程度。久留米といえば「呼び戻しスープ」が有名ですが、特有の酸味や発酵臭は前に立たせないように、それでいて骨の旨味とポジティブな炊き出し感はハッキリと打ち出しています。
ザラついた舌触りを演出するためにポテトパウダーを使っていますが、言われても分からないように組み込んであるため、ここはサンポー食品が培ってきた技術力の高さと繊細さを感じるポイント。開発中のサンプルに原材料名の表示はなかったので、実はポテトパウダーの存在に気が付かず、完成品が手元に届いてから原材料名を確認し、試食中のサンプルにも入ってた!? などと後から開発に確認したほど。
その粉末スープも然る事乍ら、もっとも注目すべきは豚脂100%の重厚な「調味油」で、ここには「マローオイル」という “骨髄から抽出した骨の香りが特徴的なオイル” を配合し、豚骨を長時間じっくりと炊き込んだ風味と鼻に抜ける豚脂の芳ばしさを全面的に表現しています。何を隠そう粉末スープの配合は、この「マローオイル」が持つポテンシャルを遺憾無く発揮させるための骨組み。
香りを認識する嗅覚は、感情と記憶を処理する器官(扁桃体と海馬)に接続されているため、記憶を呼び起こすためのトリガーになり、また味を判断する上でも重要なポジションを占めている感覚です。サンポー食品の本社に訪問した際、実は関係者に久留米の老舗でラーメンをご馳走になったので、その瞬間に嗅いだ香りの記憶も手繰り寄せつつ、脳に浸透するような豚脂の芳ばしさを追求しました。
ちなみに粉末スープの中に若干のトロミ成分を配合していますが、あくまでも豚脂の芳ばしさを運ぶために、それこそ微粒子レベルで調整してもらったので、よくある不自然な高粘度スープではありません。また後入れの調味油(マローオイル)は “しっかり混ぜ合わせたほうが強く香る” ため、調理の際は意識してください。
かやく
すべてはスープの香りを尊重するために‥‥
先入れの「かやく」は、背脂加工品、メンマ、ネギとシンプルな構成で、お世辞にも具沢山とはいえません。ただ、これも厳選した精鋭たち。食感のアクセントについてはキクラゲも視野に入れていたのですが、前述のスープにはメンマの風味が映えると思い、キクラゲではなくメンマをチョイス。
開発段階で最初のサンプルを送っていただいた際、サンポー食品から後入れネギの打診を受けたものの、とにかく香りを重視したいとの思いから、ネギはスープの邪魔しないフリーズドライ製法の青ネギを即決。上記の画像では目立っていませんが、無理を言って背脂加工品の量を増やしてもらったので、それがスープの濃度を高めることに寄与しています。
そして、忘れてはいけないのが佐賀県産「有明のり」の存在。のっけから入れないでほしいと前述しましたが、半分から1/3ほど食べ進めた頃合いになると “マローオイルの香りが弱くなってくる” ので、ここから「有明のり」が本領発揮。豚と海苔は生まれ故郷こそ違うものの、めちゃくちゃ相性いいんですよね。
しっかりとスープに沈め、旨みを吸わせてから麺と一緒に、または海苔だけ単体で、あるいは白ご飯と一緒に合わせるなど、お好みのマリアージュを楽しんでください。
まとめ
久留米とんこつラーメンの専門店では、伝統技法である「呼び戻し」のクセを前面的に押し出した店も多いため、それを当初は目指していたのですが、共同開発する中で最重要視すべきは「香り」と判断。サンポー食品が私のワガママや無茶振りを受け入れてくれたことも完成の秘訣ですが、それ以上に同社が培ってきたノウハウと100年以上の歴史があったからこそ実現した “究極” を冠する一杯。
まだサンポー食品のことを詳しく知らない方でも、普段はカップ麺を召し上がらない方でも、これを機に魅力を感じていただけると自負している “カップラーメンとして究極に美味しい” を目指した一杯‥‥ぜひ深呼吸を挟みながら、既存のカップ麺にはない香りの臨場感を体験してみてください【author・taka :a(大石敬之)】