どうも、taka :a(@honjitsunoippai)です。
本日の一杯は、2025年8月25日(月)新発売、東洋水産(マルちゃん)のカップ麺「推しの一杯 魁龍 どトンコツ」(333円+税)の実食レビューです。
昔ながらの久留米とんこつスタイルを貫き通す「魁龍 博多本店」とマルちゃんが初コラボ “荒ぶるクサさと旨さの濃厚ど豚骨ラーメン„ を具現化!
実際に食べてみた感想と経験に基づいて評価し、カップ麺としての総合力を判定します。よろしければ、最後までお付き合いください。
推しの一杯 魁龍 どトンコツ
推しの一杯(おしのいっぱい)とは、マルちゃんの東洋水産が自信を持ってオススメする、全国各地の人気ラーメン店とのコラボをコンセプトに据えたた即席カップめんブランドで、2024年3月13日発売の「環2家」監修商品を皮切りにスタート。以降は「彩未」「横綱」「夢を語れ」「大喜」らが名を連ね、現在に至ります。

このページでレビューする「推しの一杯 魁龍 どトンコツ」は、行列の絶えない福岡の名店「魁龍 博多本店」の味わいを再現したカップラーメンで、お店が推すやわらかめの茹で加減「ずんだれ」をイメージしたノンフライ麺に、熟成した香りを特徴とする “荒ぶるクサさと旨さの濃厚ど豚骨スープ„ を合わせた期待の新作。過去に何度も即席カップめんを監修している「魁龍 博多本店」ですが、東洋水産とのコラボは前例がありません。
魁龍(かいりゅう)とは、1992年(平成4年)4月6日に福岡県は北九州市小倉北区で創業し、現在も久留米とんこつラーメンの伝統技法 “呼び戻し„ のスタイルを貫き通してる行列店。
——なのですが、実食の前に触れておきたいのが福岡県に存在する「魁龍 博多本店」と「魁龍 小倉本店」の違い。どちらもルーツを同じくする「魁龍」でありながら、それぞれの資本関係は異なります。さて、魁龍の歴史を紐解きましょう(以下、敬称略)。

現在を遡ること70年以上、1952年(昭和27年)久留米に2つの人気店「清陽軒」と「幸陽軒」が台頭していました。清陽軒は飯田耕作(いいだ こうさく)及びその妻・輝子(てるこ)並びに輝子の実弟・香月浩(かつき ひろし)が久留米市野中町で始めた屋台にルーツを持ち、香月浩が「清陽軒」を創業。後に “呼び戻し„ の代表格となる「大砲ラーメン」の創業者・香月昇(のぼる)は、清陽軒初代の実弟にあたります。
一方、清陽軒と共に人気を博していた幸陽軒(現在閉店)は、原口幸春(はらぐち ゆきはる)及び森山定男(もりやま さだお)が立ち上げた店で、味づくりを担当したのは後者。幸陽軒の創業から2年後、森山定男は久留米市六ツ門町で屋台「珍宝軒」を経営し、原口幸春は1965年(昭和40年)に佐賀県の基山町で「丸幸ラーメンセンター」を開業することになるのですが、この森山定男こそが「魁龍」創業者の実父。

1992年(平成4年)4月6日、福岡県北九州市小倉北区で「魁龍」を創業した森山日出一(ひでかず)は、幸陽軒の厨房を任されていた父・森山定男の味を受け継ぎ、さらに独学で自らのラーメンを叩き上げ、現在は福岡市博多区東那珂2丁目で「魁龍 博多本店」を営んでいます。はい、こちらが「推しの一杯 魁龍 どトンコツ」の監修店。
創業の地・小倉(北区東篠崎2丁目)に店舗を構えている「魁龍 小倉本店」は、森山日出一の実弟にあたる森山宏志が経営している店舗。なにかしらの衝突があったのか創業店は弟に譲り、創業者は博多で腕を振るっている——という流れ。ちなみに博多本店の公式ウェブサイトや店内にも “当店、魁龍博多本店は、小倉店とは一切関係ありません。魁龍は、博多本店だけです„ と掲示されているので、その確執は深そうです。

スープの濃さ・ニオイ・ブリックス値(Brix、光の屈折を原理に液体の濃度を示す単位)など、いずれも個性的な要素は「小倉本店」のほうが強烈で、比較的に「博多本店」のほうがマイルドとの評判ですが、豚頭と背脂のみを使い、24時間つきっきりで炊き上げた呼び戻しスープは新横浜ラーメン博物館(ラー博)に “どトンコツ„ と言わしめた至高の逸品。その臨場感が熱湯を注ぐだけで楽しめるのか、東洋水産の本気に注目です。
※「呼び戻し」についての詳細は「大砲ラーメン 呼び戻し風とんこつ味」のレビューをご参照ください。
開封

今回のカップ麺に別添されている小袋は、先入れの「かやく」に、後入れ「粉末スープ」と「液体スープ」の組み合わせで、構成は「マルちゃん正麺 カップ」などで頻繁に見かけるパターン。お店の “ずんだれ„ をイメージしたノンフライ麺にも正麺カップの独自技術「生麺ゆでてうまいまま製法」(特許 第5719064号)を採用しているようですが、これについては不安なポイント。

ずんだれとは、九州の方言で “だらしがない、しまりがない„ を意味する言葉。転じてラーメン業界では柔らかめに茹で上げられた麺のことを指し、その茹で加減については個人の好みも強く反映される項目になりますが、魁龍の麺が “ずんだれ„ なのは「麺は茹でるもの」という店主の信念に由来しています。これまでの経験上、ずんだれを「生麺ゆでてうまいまま製法」で再現するのは至難の業に思えるのですが、はたして——。
ちなみに魁龍のカップラーメンは、筆者が把握している限り2005年(平成17年)以前から存在し、当時は十勝新津製麺(後の「とかち麺工房」)がローソンの留型として開発。その後はサッポロ一番のブランドで知られるサンヨー食品との契約が続き、直近だと2018年(平成30年)1月15日、佐賀県三養基郡のサンポー食品が「焼豚ラーメン×魁龍どトンコツ」を発売していました。
しかし、そこから現在までの間、魁龍が即席カップめんを監修した記録は残っていないため、7年以上ぶりのカップラーメンです。
製品詳細情報・購入価格等
製品名:推しの一杯 魁龍 どトンコツ 製造者:東洋水産株式会社 製造所:関東工場(群馬県館林市赤生田本町3831-1) 内容量:124g(めん75g) 商品コード:4901990381741(JAN) |
発売日:2025年8月25日(月) 実食日:2025年8月28日(木) 発売地域:全国 取得店舗:コンビニ(セブン-イレブン) 小売価格:333円(税別) 購入価格:359円(税込) |
麺の種類:ノンフライ麺 スタイル:大判どんぶり型 容器材質:プラ(PS) 湯量目安:410ml 調理時間:熱湯5分 小袋構成:3袋(粉末スープ・液体スープ・かやく) |
原材料名とアレルギー表示
【原材料名】めん(小麦粉(国内製造)、でん粉、食塩、植物性たん白、こんにゃく、大豆食物繊維、植物油脂、乳糖)、添付調味料(ポークエキス、たん白加水分解物、植物油、しょうゆ、豚脂、でん粉、デキストリン、食塩、香辛料、砂糖、酵母エキス)、かやく(焼豚、メンマ、ねぎ)/加工でん粉、調味料(アミノ酸等)、酒精、かんすい、増粘多糖類、炭酸カルシウム、レシチン、カラメル色素、香料、pH調整剤、酸化防止剤(ビタミンE、ビタミンC)、香辛料抽出物、ビタミンB2、ベニコウジ色素、ビタミンB1、(一部に小麦・乳成分・大豆・鶏肉・豚肉・ゼラチンを含む) |
実食開始

別添の小袋は「かやく」のみ先入れで、内容は焼豚、メンマ、ネギとシンプルなラインナップ。これも正麺カップの流れを汲んだスポット商品で頻繁に見かける構成ですが、ネギがFD(フリーズドライ)加工なのは嬉しい点。今回のモデルになっている店舗のラーメン(標準)もトッピングはシンプルなので、その分しっかり “荒ぶるクサさと旨さの濃厚ど豚骨„ に振り切った仕上がりに期待したいところ。

っていうか “荒ぶるクサさと旨さ„ って「マジ盛 クレイジー豚骨」(2024年9月16日発売品)のキャッチフレーズと丸かぶりしてんじゃん——などと思いつつ、さておき調理後のビジュアルも実にシンプルな佇まい。ただですね‥‥けっこうクセぇw(※無論、褒め言葉にございます)。
明星食品の「大砲ラーメン」監修シリーズを筆頭に、あえて豚骨のクサさを強調した商品というのも珍しく昨今。しかし、基本は万人受けを狙う傾向がある東洋水産。それは激辛系も然り、荒ぶるクサさといえども実際のところは‥‥ねぇ? みたいな着地を想定していたのですが、なんのなんの。
あとは旨さにも余念がないのか、そして「生麺ゆでてうまいまま製法」は “ずんだれ„ を表現できているのかどうか、そういった部分に注目しつつ「めん」「スープ」「かやく」の特徴を解説し、カップ麺としての総合力を判定します。
栄養成分表示:1食(124g)あたり |
カロリー:432kcal たん白質:12.8g 脂 質:12.3g 炭水化物:67.5g 食塩相当量:7.2g (めん・かやく:2.6g) (スープ:4.6g) ビタミンB1:0.27mg ビタミンB2:0.30mg カルシウム:546mg |
参考値(調理直後に分別した値) 熱量:432kcal(めん・かやく:304kcal)(スープ:128kcal) |
※当ブログに掲載している「原材料名」及び「アレルゲン情報」並びに「栄養成分表示」などの値は、実食時点の現品に基づいたもので、メーカーの都合により予告なく変更される場合があります。ご購入・お召し上がりの前には、お手元の製品に記載されている情報を必ずご確認ください。 |
めん


うん、わかってた
「生麺ゆでてうまいまま製法」とは、茹でた麺を特殊な方法で乾燥させることにより、お湯を注ぐだけで生麺本来の味と滑らかでコシのある食感を実現した東洋水産の特許技術。袋麺の「マルちゃん正麺」に採用されている「生麺うまいまま製法」(特許 第5153964号)とは異なる製法で、原材料にマイクロサイズの微粒子(こんにゃく粉)を配合し、多数の細かい穴を分散・多孔質化させているところが大きな違いになります。

いくつかのパターンが存在するテンプレの中では比較的に加水率を下げてはいるものの、店舗で提供されている低加水麵とは別物で、調理直後の食感は “ずんだれ„ どころか強めの反発性が目立ち、調理中もほぐれにくさが気になるなど、ずんだれの魅力や久留米の臨場感が伝わってくる仕様ではありません。
また滑らかな口当たりからスープを弾く傾向があり、食べ始めはアンバランスに思えたのですが、小麦の風味は一級品。けっきょく最後まで “ずんだれ„ にはならなかったので、スープの温度に固執がなければ10分放置、なんだったらカップから放り出して4、5分ほど茹でる——それは元も子もないか。でもでも、基礎クオリティは高いです。
スープ


すごいすごい!
まずは粉末スープの味を確かめてみたところ、舌に対するザラつきや畜肉エキスとは異なる粉っぽさが強く、骨感を演出する役割を大きく担っているイメージ。加えて「田中商店」監修シリーズにも通じる炊き出し感の表現もあり、ポークエキスについてもクセのあるタイプを配合するなど、この時点で一定の荒々しさが備わっていたのですが‥‥

液体スープを入れた途端、マルちゃんのカップラーメンとは思えないほど強烈なニオイが部屋中に立ち込め、ちょっと大変なことにw いわゆる獣臭はもちろん、それとはベクトルが違う豚骨臭や骨髄っぽい表情も感じるほど。醤油のキリッとした要素も加わりますが、その輪郭がボヤけるほど豚骨が強く、なるほど熟成感という表現にも納得の味わい。とろみは増粘剤で不自然に高めてあるものの、おかげで麺が孤立することはありません。
実店舗の呼び戻しスープには、イソ吉草酸(チーズのようなニオイを放つ天然脂肪酸)とイソ酪酸(バターや銀杏のようなニオイを放つ短鎖脂肪酸)が特異的に含まれ、イソ吉草酸に至っては『悪臭防止法』において “特定悪臭物質の規制対象„ に指定されており、それがクサいと表現される要因の一つなんですけど、独特の芳香が多くの人を魅了しているのも事実。そこまで強烈なニオイではないけれど、だいぶ思い切ったスープです。
かやく


メンマのアクセントよき
成型感の強い焼豚に、コリコリとしたメンマ、そしてFDのネギも含め、いずれもマルちゃんのカップ麺で頻繁に遭遇するアイテム。本商品のメーカー希望小売価格は333円(税別)とハイエンドな立ち位置なので、もうちょい頑張ってほしかった思いもありますが、メンマの食感と発酵感は “どトンコツ„ スープと相性ばっちり。
やや大きめにカットされたネギは程よい歯触りで、特有の甘さがスープにフィット。また各具材がスープの魅力を阻害してくることもなかったので、スープとのバランスを最大限に尊重してのチョイスだったのかもしれません。
総評
やはり「生麺ゆでてうまいまま製法」では “ずんだれ„ の魅力を再現するに能わず、かやくの内容も値段を踏まえるとチープに思えてしまいますが、東洋水産の公式サイトでも訴求されている “熟成香が特長の荒ぶるクサさと旨さの濃厚ど豚骨„ に偽りなし。もちろんニオイに対する期待度や耐性値の差によって意見は割れると思いますけど、スープの推し方は見事と評価せざるを得ません。
現時点で「環2家」「彩未」「横綱」は通年的に販売されていますが、今回の「魁龍」は期間限定のスポット商品なので、気になる方はお早めに。また実食の際は部屋中に “荒ぶるクサさ„ の影響が出ますので、喫食のタイミングには注意してください。マジで。【author・taka :a(大石敬之)】
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