本日の一杯は、2020年10月26日(月)新発売のカップ麺、サンヨー食品「みんみんラーメン本店監修 八王子醤油ラーメン」の実食レビューです。
東京・八王子のソウルフード「八王子ラーメン」を人気店監修のもとカップラーメンにアレンジ!!
実際に食べてみた感想と経験に基づいて評価し、カップ麺としての総合力を判定します。よろしければ、最後までお付き合いください。
みんみんラーメン本店監修カップ麺
みんみんラーメンとは、東京都八王子市楢原町に本店を構える老舗のラーメン店で、創業は1982年(昭和57年)5月。しょうゆ味の澄んだスープをラードで覆い、具材として刻み玉ねぎをトッピングした、地元民に長年愛され続けている東京都八王子市の人気ご当地ラーメン「八王子ラーメン」の代名詞といっても過言でありません。
その受賞歴は2013年の「第3回 八王子お店大賞」をはじめ、2014年の「食べログ 東京ベストラーメン2014(83位)」にも選出された実力の持ち主。昔ながらの素朴な味わいは、地元民のみならず都外にも多くのファンを抱え、2020年10月30日現在の食べログ点数も3.71と高評価を募り、八王子を代表するラーメン店として全国的な知名度を誇っています。
今回の新商品「みんみんラーメン本店監修 八王子醤油ラーメン」は、サンヨー食品(サッポロ一番)と「みんみんラーメン本店」の共同開発商品で、同店の味わいをコンビニ向けの縦型ビッグ容器で再現。サンヨー食品の公式ウェブサイトには——
表面に張りがあり、芯の歯切れがよく、食べやすいめんです。
サンヨー食品 > ホーム > 製品情報 > みんみんラーメン本店監修 八王子醤油ラーメン
清湯系のポークのうまみに、醤油のコクと玉ねぎの甘みを合わせたやや甘めですっきりとした醤油ラーメンスープです。ラードベースの調味油を合わせることでコクのある味わいに仕上げました。
具材は2種類の玉ねぎ、チャーシュー、ねぎの組み合わせです。
——と、上記のように製品情報を紹介。加えて容器側面には “八王子ラーメンの特徴” として「その1:澄んだ醤油スープ」「その2:スープ表面に浮いた油」「その3:きざみ玉ねぎ」と3つの定義を記載しているため、もうすこし詳しく八王子ラーメンの特徴や歴史を掘り下げてみましょう。
「八王子ラーメン」とは、東京都八王子市を発祥とするラーメンで、現在のルーツを築き上げたのは1959年(昭和34年)に八王子市子安町で開業した「初富士」が元祖。もともと創業者である先代が北野駅前で営んでいた惣菜屋を前身とし、区画整理による移転を余儀なくされ、現在の店を構える子安町に引っ越すことになり、惣菜で生計を立てるのは難しいと考えた先代が “ラーメン店” に転身。
当時のラーメンといえば、中華料理店で提供されている商品の一つに過ぎず、出前が一般的だった時代。けれども先代はラーメン専門店を立ち上げ、しかも出前はしない店売り限定という業態から、特徴を出そうと思案していたところ、北海道の旅行中に食べた “刻み玉ねぎ入りのラーメン” に衝撃を受け、それにインスパイアされたのが八王子ラーメンの特徴とされる「刻み玉葱」の存在です。
けれども単純に玉ねぎをトッピングするだけでは特有の辛味が抜けず、試行錯誤の末に辿り着いたのが油。初富士の油は豚脂(ラード)を主成分とし、それをスープの表面に浮かべてみたところ、スープのコクが増すと同時に玉ねぎの表面がコーティングされ、玉ねぎの辛味が抑えられるだけでなく、甘みも引き立てられた結果「スープ表面に浮いた油」という現在のスタイルが定着。
スープが澄んだ「しょうゆ清湯(ちんたん)」なのは、八王子ラーメンの元祖「初富士」のラーメンが醤油ベースだったことに因み、これら3つの特徴は地元・八王子をこよなく愛するラーメン好きの集団「八麺会(はちめんかい)」によって定義づけされました。
そんな八王子ラーメンを代表する店の一つ「みんみんラーメン本店」の特徴は、今は亡き創業者である先代から受け継いだ門外不出のタレに、豚ガラと香味野菜から取った淀みのない秘伝のスープを合わせ、その表面を覆うラードの製法は明かされておらず、刻み玉ねぎは手切りと機械切りの2種類をブレンドしているのもポイント。
果たしてコンビニ向けの縦型ビッグで老舗の味が再現できているのかどうか、サンヨー食品の手腕に注目です
開封
今回のカップ麺に別添されている小袋は、フタの上に貼り付けてある「仕上げの小袋」が1袋。カップラーメンの容器は紙製、もしくはPS(ポリスチレン)樹脂を採用するのが一般的ですが、この「みんみんラーメン本店監修 八王子醤油ラーメン」にはPS樹脂よりも強度の高いPP(ポリプロピレン)樹脂の容器を採用しています。
上記のメーカー引用文に “具材は2種類の玉ねぎ、チャーシュー、ねぎの組み合わせ” と書いてあったように、構成としてはシンプルな内容ですが、具材の玉ねぎは刻み玉ねぎとフライドオニオンの2種類で、王道の八王子ラーメンには基本的に使用されない青ネギが入ってるのはカップ麺のオリジナル。
チャーシューはチップ状の味付豚肉なので、あまり情緒のある具材とはいえないものの、フライドオニオンから漂う独特な芳ばしさと醤油の香りが印象的。
メーカー希望小売価格は税別220円の設定で、縦型ビッグのカップラーメンはコンビニ向けに開発されているのですが、販売地域及び販売店を問わない全チャネル販売の新商品としてリリースされた今回。
現在から遡ること10年以上前、とかち麺工房がサークルK・サンクス限定商品として「みんみんラーメン」のカップ麺を製造しており、プライムワンから2013年に再販。その後、とかち麺工房は倒産し、それを買収した渡辺製麺(「一風堂」を運営している「力の源」グループ)が2016年にローソン限定商品として「みんみんラーメン」のカップ麺を製造していたのですが、サンヨー食品とのタイアップは初の展開です。
製品詳細情報・購入価格等
製品名:みんみんラーメン本店監修 八王子醤油ラーメン 販売者:サンヨー食品株式会社 製造所:太平食品工業株式会社 本社工場(A) 内容量:95g(めん70g) 商品コード:4901734040972(JAN) 商品サイズ:φ112×118(mm) |
発売日:2020年10月26日(月) 実食日:2020年10月30日(土) 発売地域:全国(全チャネル) 取得店舗:ネット通販サイト(オムニ7) 商品購入価格:213円(税込・送料別) 希望小売価格:220円(税別) |
麺の種類:油揚げ麺 スタイル:縦型ビッグ 容器材質:プラ(PP) 湯量目安:420ml 調理時間:熱湯3分 小袋構成:1袋(仕上げの小袋) |
原材料名とアレルギー表示
【原材料名】油揚げめん(小麦粉(国内製造)、植物油脂、食塩、粉末卵)、スープ(豚脂、しょうゆ、糖類、食塩、植物油脂、ポークエキス、香辛料、かつおエキス、発酵調味料、たん白加水分解物、香味調味料)、かやく(フライドオニオン、味付豚肉、玉ねぎ、ねぎ)/ 加工でん粉、調味料(アミノ酸等)、カラメル色素、炭酸カルシウム、香料、トレハロース、かんすい、レシチン、増粘剤(キサンタン)、微粒二酸化ケイ素、酸味料、クチナシ色素、酸化防止剤(ビタミンE、ビタミンC)、ビタミンB2、ビタミンB1、(一部に小麦・卵・乳成分・ごま・大豆・鶏肉・豚肉・ゼラチンを含む) |
実食開始
麺は熱湯3分の油揚げ麺で、縮れは強めに施され、お湯を注ぐ前から油揚げ麺特有の香りが漂います。
なお「ソウルフード」として地元民に愛されている人気ご当地ラーメンを「老舗」監修のもと再現したスポット商品で、なおかつPP樹脂の縦型ビッグ容器を採用したサンヨー食品のカップ麺といえば、2019年11月18日に発売(2020年9月14日に再販)された「元祖ニュータンタンメン本舗監修 タンタンメン」が記憶に新しく、今回その流れを汲んでいるようなコンセプト。
ひとまず熱湯を注いでから3分後、仕上げの小袋に含まれるオイルの量は多く、刻み玉葱が八王子ラーメンのアイデンティティを表現しているのですが、よくも悪くもサンヨー食品の縦型ビッグは油揚げ麺のスナック感が玉に瑕。それこそ「元祖ニュータンタンメン本舗監修 タンタンメン」が分かりやすい例で、結果的に大きく評価を下げることも珍しくありません。
もちろん油揚げ麺もカップラーメンにおける魅力の一つなので、麺単体としてのクオリティが高かった場合、頭ごなしに否定的な評価はつけられないのですが、曲がり形にも昭和57年創業の味を再現したカップ麺。八王子を代表する老舗ならではの臨場感は打ち出せているのか、それとインスタント感の両立に注目しつつ「めん」「スープ」「具材」の特徴を解説し、カップ麺としての総合力を判定します。
栄養成分表示:1食(95g)あたり |
カロリー:429kcal たん白質:7.9g 脂 質:18.3g 炭水化物:58.2g 食塩相当量:6.5g (めん・かやく:2.1g) (スープ:4.4g) ビタミンB1:0.33mg ビタミンB2:0.59mg カルシウム:279mg |
参考値(調理直後に分別した値) 熱量:429kcal(めん・かやく:331kcal)(スープ:98kcal) |
※当ブログに掲載している「原材料名」及び「アレルゲン情報」並びに「栄養成分表示」などの値は、実食時点の現品に基づいたもので、メーカーの都合により予告なく変更される場合があります。ご購入・お召し上がりの前には、お手元の製品に記載されている情報を必ずご確認ください。 |
めん
やっぱりスナック的だけど印象は悪くない
八王子ラーメンを提供している店では、数年前まで尾張屋滝井製麺所(現在廃業)の麺を使用した店が多く、今回のカップ麺を監修している「みんみんラーメン本店」も例外ではなかったのですが、現在は菅野製麺所のストレート麺を使用とのこと。そのため以前の麺とは異なる評判・口コミも多い反面、けっして評価が低いわけではなく、丁寧に折り畳まれた麺線にも定評がある現在。
対して今回のカップラーメンに使われている麺は、平打ちの中細ちぢれ麺で、しなやかな実店舗のストレート麺とは異なる形状。加水率は低めに設定してあるため、粘りの強さや反発性の高い弾力よりも歯切れの良さが魅力となっているのですが、やはり「元祖ニュータンタンメン」監修のカップラーメンと同じく湯の伸びの速さが気になるところ。
またスナック的な風味から、再現度の高さに期待している方や本物志向の方にはオススメできない麺ではあるものの、後述する今回のスープは油揚げ麺を飼い慣らすタイプだったので、スナック的なフライ麺が違和感なくフィット。ただしフライングするとスナック感が強すぎるため、熱湯3分きちんと守り、それから食べ進めてください。
スープ
驚きはないけど「仕上げの小袋」が効果的
仕上げの小袋を入れる前、粉末スープだけの状態で味わってみたところ、カップラーメン(化学調味料)特有のピリピリとした刺激が並行する味わい。もちろん醤油も粉末ですが、生姜やニンニク、オニオンなどの香味野菜を強めに効かせ、程よく後味を引き締めるペッパー系のアクセントも程よいバランス。
けっこうスープの色が深いように、粉末ながら濃口醤油のコクも意識され、ふわっと香る鰹の旨味が隠し味。正直これといって個性的な味ではないのですが、実際の「みんみんラーメン本店」で提供されているスープも素朴な味わいとの評判が多いため、オーソドックスな印象も悪くありません。
「仕上げの小袋」にタレは含まれていなかったので、液体しょうゆ特有のフレッシュなコクはプラスされないけれど、なんといっても八王子ラーメンを象徴するためのオイルが効果的。植物油脂をブレンドしつつ、しっかり豚脂(ラード)を主成分としていることが伝わってくるコクと香りから、粉末スープでは出せない臨場感が見どころ。
また容器の口径が標準どんぶり型のカップ麺より狭いことも功を奏しているのですが、画像のようにオイルの量はスープの表面に油膜を作るほど。味のベクトルはカップラーメンに寄っているため、化学調味料が苦手な方にはオススメできないけれど、昔ながらの素朴さとオイルのコクにこだわった骨組みは八王子ラーメンに通じるところがありました。
具材
玉ねぎのタイプは異なるけどフライドオニオンはナイス
国産の豚肉を使用している実店舗のチャーシューは、口の中でホロホロと崩れてしまうほど柔らかく、ファンも多いのに対し、カップ麺のチャーシューはチップ状でハムみたいな食感。そのクオリティが本物の足元にも及ばないのは言うまでもなく、メンマや海苔も入っていませんが、多めに入っている歯触りの強い青ネギは常に主張してきます。
大きめにカットされた角切りの玉ねぎはフライドオニオンなので、実店舗の玉ねぎ(生)とはタイプが大幅に異なるものの、フライドオニオン特有の芳ばしさが魅力となり、それはスープの味にも寄与するほど。もう片方の玉ねぎは細かく刻んだ極小サイズの玉ねぎで、シャキッとした食感で差別化を図っていたのですが、ほとんどスープの底に沈んでしまうのが玉に瑕‥‥w
というわけで、スープを飲み干すか捨てる、または白ご飯を入れないと、小さいほうの玉ねぎは楽しめないかもしれません。
総評
★★★★☆☆☆☆☆☆(★4+)
たとえばサンヨー食品(太平食品工業)が誇る「和ラー」など、同社はノンフライ麺と見紛うようなクオリティの油揚げ麺も所持しているため、もうすこしハイクオリティな麺を使用してほしかったところではあるものの、スープについては納得の味。具材も芳ばしいフライドオニオンが効果的だったので、しょうゆ味のカップラーメンが好きな方であれば、おおむね幅広い層の方が楽しめる一杯だと思います。
また本文中でも触れたように、老舗が監修した再現カップラーメンで、なおかつ地元民に愛されるソウルフードをテーマに開発された商品という立ち位置から、今後も同じコンセプトの変わり種を定期的に発売してきそうな予感——次回、あなたの街で愛されているソウルフードがカップ麺にアレンジされるかも(author・taka :a)